▼ 私はまた、貴方に恋をする 大丈夫 貴方の 温もりがあるから 私はまた、貴方に恋をする 『ここまで来れば少しは休憩しても、大丈夫かな』 周りの野原に腰を落としふぅと息を吐く。だいぶ走ったため息ぎれや足の疲れなどで半分限界を向かえていた。 「見つけたぜ!もう鬼ごっこも終わりらしいな?」 『なっ何で…』 「まぁ捜すのに手間取ったが仲間を全員呼び出したから、疲れはしなかったがな」 『……』 相手を睨みつけながら、痛む足を叩き立ち上がる。だって、私はまだ倒れる訳にはいかないから。 不良が向かってくるのが目に入るが足が動かない。 『私が犠牲になれば、隼人を許してくれる?』 苦し紛れにそう伝えると、不良のニヤついた顔が目につく。 次第に意識が薄れ、地面に倒れる衝撃に目をつぶる。しかしいつまでもこない痛みに、そっと目を開ける。 「遅くなっちまってわりぃな!大丈夫か?」 『なんで?』 「ツナから聞いたときは、びっくりしたぜ。……紗智俺を頼れよ」 『もしディーノが一人だったらって考えたら怖かった。ディーノが負けるはずないって分かってる!でも、怪我するかもしれないでしょ?だから……』 涙目で訴えてくる紗智を引き寄せと抱きしめる。 「紗智は俺のこと考えてくれてたんだよな。ありがとよ」 『……ディーノ』 ガシャンと近くで音がする。今まで忘れていたけど、私追いつめられてたんだった。 「俺達を無視してんじゃねぇ!そこの兄さんどいてな!」 先ほどの音は彼らが痺れを切らした音だったようだ。鉄パイプを持って近づいてくる。 「黙れよ」 ディーノが睨むと不良達の動きが止まる。 「ツナや紗智を酷い目に合わせてくれたな?お礼しねぇといけないよな?」 「ボス」 「ロマーリオ。紗智を頼む。こいつらは俺がやる」 「はい」 紗智を支えていた位置をロマーリオに譲り不良達を睨みつけたまま鞭を取り出す。 「オイオイ!兄ちゃんカッコイイこと言ってるけど。そんな鞭で何する気だ?」 「そうだぜ。てめぇが何者かは、知らねぇがその女渡して貰おうか」 「断る」 ヒュンと風を切る音とともにディーノの鞭が不良の一人の足に引っ掛かり音を立てて男が倒れる。 「クソッ!許さねぇ」 不良達は、今まの攻撃で怒ったのか一斉に襲いかかってくるが、鞭が舞い不良達は近づくことも出来ず一人一人と倒れていく。 『すごい』 「ボスは紗智さんの話を聞いたとたん一人で飛びだしていこうとしたんですぜ?でもボンゴレの家庭教師に冷静になれって止められて、俺達と探し始めたんだ」 『えっ?』 呟くようなロマーリオさんの言葉に、一瞬耳を疑った。 ポロポロと涙が流れる。その涙は止める術もなく、ディーノを眺めながら零れていく。 「……ッ」 「これ以上は無意味なことぐらい分かってんだろ?さっさと退け」 ディーノの言葉で不良達は、折り重なるように去っていく。 『ディーノ』 不良達が去っても振りかえらない姿に首を傾げふらつく体を必死に動かし、手を伸ばしながら立ち上がり歩く。 「紗智」 石に躓き倒れそうになる私を抱きしめ支えてくれる。 『大丈夫?』 「紗智は………紗智は怖くねぇのか?俺が」 『なんで?』 キョトンとした表情で尋ねられた言葉に不思議そうに聞きかえす紗智に「?」を浮かべるディーノ。 『ディーノ。ありがと』 「紗智。紗智を助けたって言ってもたくさんの人間をお前の目の前で…」 『怖い訳ないよ。ディーノは私を守ってくれてた。もしディーノが来てくれなかったら……』 「紗智」 『だから怖いはずないよ?』 紗智の笑顔は、眩しかった。 (実はね、貴方の後ろ姿に私は………恋をした) . prev|main|next |