心から | ナノ
01


並盛に着きディーノは、あゆの表情を横目で見ながら、声をかける。



「家はどこなんだ?」




見たこともない景色にポカンとしているあゆは、自分にかけられた言葉と分かるとハッと顔をあげ慌てて答える。




「……あっあのっ!!そこの角を右に曲がったとこです」



本当は家なんてないから適当に言ったに過ぎない。



03




「そっか早く着いてよかったな!ご両親も心配してんだろ?そういえばあゆは並中か?」



並中?中学生?
でも今は違うなんて言わない方がいい気がする。



「…はい」




角を右に曲がると『どの家だ?』と声をかけられる。




ヤバイ



ふと見えた標識がない家を見つけ「ここです」と指をさす。




「へぇ!ここかぁ。じゃあまたな?」

「また?」

「…そんなに俺に会いたくねぇのか?」

「!すみません…あのっ…じゃあまた会いましょう』



私はこの街を出る。ディーノさんに、もう会うことはない。それでも感謝してるのは、本当だから……ありがとう。

優しいディーノさん。


さよなら。






別れる寸前のあゆの表情がどこか悲しげに何かを決意したように見えて気になる。



仕方ねぇ。まずリボーンに会って用事を済ませるか…。



車を走らせるとすぐに沢田家が見えてくる。




「よっ!ツナ」

「あっディーノさん」

「リボーンいるか?」

「ちゃおっす!」

「リボーン。家庭教師の件で来たぜ」

「えっ?何の話だよ。リボーン!」

「まぁまぁ。抑えろよツナ」

「ディーノさん」

「っとその前に、あゆって女の子知ってるか?」

「あゆ?しらねぇぞ聞いたこともねぇ」

「知らない?」

「あぁ」



あゆ?

胸騒ぎがする。




ふっと彼女との会話を思い出すと、ツナの家から飛び出す。外にいたロマーリオを連れ、並盛中へと走る。




バンッと音をたてて応接室のドアを開くと、一人の少年に睨まれる。



おっとヤベー。まだ家庭教師の件リボーンと話まとまってなかったぜ……。




「君誰?不法侵入だよ」

「まぁ細かいことは気にすんなよな?俺はキャバッローネファミリーのボスのディーノだ」

「だから何?」

「お前自分で聞いたんじゃねぇか!俺はリボーンに、お前の家庭教師を頼まれて来た」

「赤ん坊に?ふぅん」




ニヤリと笑う雲雀の姿に苦笑する。



コイツなら知ってるかも知れないと来たが……。
コイツが教えてくれるか、あやしいな…。



「あのよ?恭弥だったよな?お前あゆって子知ってるか?」

「あゆ?そんな名前いっぱいいるに決まってる。それになんでそんなこと僕が君に教えないといけないの?」

「三並だ!三並あゆって名前の子のことを頼む。教えてくれ」

「……ハァ…聞いたことないよそんな子。僕の学校にはいないだろうね」



いない?
……あゆ







ディーノさんと別れてから、一人景色を見ながら歩く。




「これからどうしよう」



ため息も出てこないよ。



「……とりあえず街に行ってみようかな…」



ここが日本ならお金は使えるよね?



そうと決まれば財布の中身をチェックし、腹ごしらえにコンビニへと足を向ける。おにぎりを買って公園のベンチに座り、パリッと音をさせながら口に頬張る。




「はぁ」




ため息が出る。周りを見ても、知らない町並みに涙が溢れる。
すると、まだ日差しがあったはずなのに急に視界が暗くなった。ハッと顔をあげると世間ではイケメンと言われるであろう少年が顔を覗きこんでいた。




「ふぇ……?」

「どうしたのですか?」




優しくかけられた声に驚き流れでた涙を拭う。




「なっ何でもないです」

「こんなところに一人で……「貴方も一人ですよ?」




揚げ足をとるように返事を返した私の言葉に今度は、少年が目を丸くする。




「クフフ……君は面白いですね」

「はぁ……」

「ではお互い一人同士ですし、お茶しませんか?」



不思議な人。怖いって感じない……。



「えっと……」

「クフフ。ちゃんと驕りますよ」

「いぇ私あんまり時間ないんで、少しでよければ…」

「はい」



今夜泊まる場所探さないといけない。



少しだけだと心に言い聞かせ、後をついていく。




「さぁここです」




着いた店は、お洒落な店だった。




「こんな店もあるんですね」

「君は本当に不思議な人ですね。では、とりあえず入りましょう」




少年とともに喫茶店のなかに足を向け、店員に案内されて席に着く。目の前には少年が座りクフッと笑っている。




「何ですか?」

「いぇ僕としたことが、名前を聞くのを忘れていました」

「すみません。私三並あゆと言います」

「あゆですか。僕は六道骸です」

「六道さん」

「骸で構いませんよあゆ」

「はい。骸さん」




クスッと笑うと骸に首を傾げられる。




「名前も知らずにお茶に誘ってしまう骸さんは不思議な人ですね」

「はい。焦り過ぎたようです」




それから暫くは、お互い他愛のない話に華を咲かせていく。ふと外を見ると日が沈んできていることが目にはいる。
あっと声をあげ慌ててたつ。




「そろそろ帰ります」

「そうですか」

「今日はありがとうございました」

「こちらこそ。楽しかったですよ」

「そういって貰えると嬉しいです」

「ところであゆは、携帯を持っていますか?」




ハッと顔をあげ、服のポケットを探ると硬い物が手に当たる。そのまま持ち上げると、携帯が出てくる。
携帯の電源を切っていたせいか、反応が全くなく気付かなかった。

……信じられない。

電源をオンにすれば音がなり起動する。




「持ってたみたいです」

「そうですか。ではアドレス交換しませんか?」

「えっ?いいんですか?」

「もちろんですよ」




お互い携帯を取り出し登録する。




「完了」

「僕も出来ました。それではまた連絡しますね」

「はい。待ってます」




私達は、それぞれ逆方向に歩き始める。




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