心から | ナノ
01


闇は暗い


夢の中でも、それは一緒


それでも、光があれば私は立っていられる




07




そのあとすぐに、朝食準備がされた。軽い軽食のような朝食を食べ終えると、待ち構えていた女性が私を立たせる。




「えっ?何?ディーノさん?」

「可愛くしてもらってこいよ?」



ってちょっと待って下さい。
何でこんなことに?



引きずられるように歩く私の姿を見つけたロマーリオさんに声をかけられるまで、私の思考は回り続けていたらしい……。

ロマーリオさんはイマイチ状況を読み込めていない私のために案内される部屋までついてきてくれた。




「でっあゆちゃんはボスから何も聞かされてないんだな?」




聞く?

何か重要なこと聞いたかな?

うーん。

分からない。



「多分?」

「だからそんな顔してたんだな」

「はい」




もともとこんな顔で……。
こんな思考だと、話し続きませんね。

すみません。




「今日は観光しようって話なんだけどな」

「観光…ですか?」

「多分あゆちゃんを喜ばせたいんだろ」

「私が喜ぶ…?」



ダメ……。
また迷惑かけてる。



「ロマーリオさんもディーノさんも私を甘やかし過ぎです。そ・れ・に!」



ディーノさんの真新しい傷。

ここで何かが起こってるのは事実だ。
漫画を読んでない私には分からない世界。

でも、弱気になっちゃだめ。

私がここにいる意味を知るためにも…。




「日本で何かあるんでしょ?大切な時間を私に使ってたらもったいないですよ」




ニコッと笑いながらロマーリオさんに告げると、呆気に取られたらしいロマーリオさんはポカンとしている。




「あゆちゃんはスゴイんだな。でもな、この観光はまた少しの間会えなくなるからなんだ」

「会えなくなる?」

「危険なんだぜ?マフィアはよ」




特にあの守護者はな…。

と付け加えたように話す。




「だからって訳じゃねぇがボスのためと思って、付き合ってやってくれねぇか?」

「……それなら」




承諾した途端また女性達に、更衣室に引きずりこまれ、人形のように何度も着替えをさせられた。



着せ替え人形の辛さが分かった気がするのは間違いない。





淡いピンクのワンピースの上には、真っ白の可愛いジャンバーをかけさせられ、足には茶色のパンプスをはいている。
そして軽い化粧。

人間は変わります。

そんな宣言をさせられそうになるぐらい変わったと思う。




コンコンというノック音がドアから聞こえ、ゆっくり扉が開く。




「あゆ。準備は……」




途中で止められた声に不思議に思い振り返ると、固まったディーノさんが立っていた。




「あれ?どうしたのディーノさん。もしかして私変?」




声をかけても返ってこないことに『?』を浮かべながらディーノさんに近付く。




「ヤベッ……めちゃくちゃ可愛いぜあゆ」




ディーノさんの言葉に顔が真っ赤になっていく。

ディーノさんはニヤリと笑うと、頭をクシャと撫で上げる。

膝を立てると、もう片一方は床についた状態。

所謂白馬に乗った王子様のような格好で手を差し出す。




「エスコートよろしいでしょうか?お嬢様」

「……はい。お願いします」




俺は、恥ずかしそうに手を乗せるあゆの手に、そっとキスを落とす。



「えっ!!ディーノさん?」




ニッと笑うとスッと立ち上がり、手を握ったまま歩き始める。



今日はあゆの好きなことをさせてやる。おもいっきり遊ぼうぜ?

悩む暇なんてないくらいにな……。




(また会えなくなると思うと胸が痛い。不安が押し寄せてくる。でも今は繋いだ手が勇気をくれる温かな光とともに……。)


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