心から | ナノ
02


ここにいても……。

という思いが強くなり、慌てて外に出る。

何も考えず、ただ走る。




「あゆ」




名前を呼ぶが返事は、あるはずもない。『送って行った場所まで行けば……』足を動かし、降ろした家まで行く。

しかしよく見れば貸家と書いてある。




「どこ行ったんだ?あゆ」



焦る。
不安で堪らない。
この胸騒ぎはなんだ?



「クソっどこにいるんだ?あゆ」







そんなこととは知らずあゆは、一人息をつきながら、携帯を取り出す。




「さっきは驚いて何も出来なかったけど」




携帯に入っている番号を呼び出し、友達に電話をかける。



【おかけになった電話番号は現在使われておりません。もう一度番号を……】



「……えっ?」




アドレス帳に入っている電話番号を片っ端からかけるが、繋がる番号は一つもなかった。
アンテナは立っているが、使えないのだ。




「やっぱダメかぁ」




諦め思い出したように、歩き始める。



ココには、知っている人なんて……いない。

同じ日本なのに心細い。

私はどうすればいい?

助けて……。

そう心の中で強く強く叫んだ。








「…あゆ?」



あゆの声が聞こえた気がした。震える声が……。



「あゆ……待ってろよ」

「ボス!大変だ」

「どうした?ロマーリオ」

「ボネステーゼと組んでると思われていたシリオッテファミリーが動き出した」

「こんなときに……」

「あいつらボスを追って日本に来てるらしいぜ」

「何だって!?」



あのファミリーの情報網は、厄介だ。もしかしたら、あゆが……。



「ロマーリオ!至急あゆを捜せ!あゆがあぶねぇ」

「分かったぜボス!」



部下達が散って行く。そして自分も走り出す。少女を探して……。








「どうしようかな。もう夜だし……」



深々とため息が零れる。結局ここを離れることは、出来なかった。



「お嬢さん?」



声に驚きふと顔をあげる。




「へっ?」




目の前にはスーツを着た男たちがいた。




「何かご用ですか?」

「お嬢さん。キャバッローネファミリーのディーノを知ってますよね?」




ヤバイ!そう直感が告げる。


少しずつ後ろに後ずさる、そして相手が近付こうとした瞬間走り出す。




「あの少女だ!追え!」




後ろで声がする。


逃げなきゃ!ディーノさんに迷惑かけちゃう。

早く。

もっと早く。

急げば急ぐほど足が縺れて上手く走れない。




「イタッ」




足が絡まりついに転んでしまった。


ううっ……。

怖いよ。

ディーノさん。


無我夢中でディーノさんを呼んだ。自分で迷惑をかけないようにって思ったのに……。


それでも……。



「あゆっ!」




空耳が聞こえた。聞こえるはずのない声が……。



ヒュンッ



風を切る音が聞こえ、一人の男が倒れる。




「あゆ?大丈夫か?」




優しいあの声が降ってきた。その場に崩れたように座り込んでしまう。




「ボス」

「あぁ。後は頼んだ」




驚き目を丸くしているあゆを抱き抱え歩き始める。




「ディーノさんっ……」



涙が止まらない。



「家に帰ったんじゃなかったのか?」

「………っ……家……ないの……私の家ないの……」



消え入るような声だった。



「家がない?」



あゆの言葉に驚きの声をあげる。



「………」

「無事でよかった」




あゆが黙ると頭を撫でながら囁く。




「心配したんだぜ」

「……ありがとう」




そこで私の意識は途切れた。

ごめんね?

迷惑かけて……。
本当のこと話すから。

今はこのまま寝かせて……。





(本当に心配したんだぜ?お前じゃなかったら俺はスパイで片付けてたかもしれないな。)


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