テニス短編 | ナノ
内緒

君と俺はよく似てる



「柳くん」

「あぁお前か。何だ?」




彼女は俺のクラスの委員長だ。

頼まれたら断れない。

誰にでも優しく接する。

三嶋秋は俺の想像を越えた行動をおこす。
そんな俺と三嶋は似てる部分が一つだけある。

それは、人をよく観察しているところだ。俺はデータのためだが、あいつは人のためだ。

そんな三嶋が声をかけた理由とすれば、誰かに俺を呼んで欲しいと頼まれた確率が98%か。




「えっとドアのところで呼んで欲しいって頼まれて……」

「やはりか」

「えっ?ゴメン。ご足労かけます」

「……」




おどおどしながら俺をみる姿に、ニヤリと頬がゆるむ。
だがそれを見られる訳にはいかないために思案したふりをする。




「断ってきましょうか?今柳くんは思案中ですって」




こいつはときどき抜けてるとこがある。
ここで自分が行くことで、睨まれるとは思ってないのだろう。




「行くぞ」




そう彼女の手を取ってドアまで行くと数人の女子が三嶋を睨む。

中心にいる女が俺を呼び出した本人だろう。

俺を見るなり顔色が変わったからな。




「何か用か?」

「私には用ないと思うので、放していただけませんか?」

「俺は用がある」

「柳くん。あのちょっと付き合ってくれないかな?」

「すまないが、俺には君たちに用がないから通してくれないか?」

「えっ?」




彼女たちの間をくぐって廊下に出る。




「あぁそれと俺はしつこい女は嫌いだ。その意味分かるだろう?」




そのまま彼女の手を引いて屋上まで歩く。彼女はよく分からないようでとりあえず引っ張られるように歩いているようだ。




「三嶋」

「何か?」




状況を整理しているようでボーッとしながらも答えたようだ。




「俺がお前をここにつれてきた理由を考えている確率90%だ」

「はいっ?」

「俺はお前が与えてくれるものが嬉しかった。いつもお前は俺を特別に扱わず平等に扱う」

「普通です」

「俺達テニス部レギュラーはいつも特別扱いだ」

「はぁ」

「だからお前は新鮮だった。常に周りに気を配り手助けする。俺には出来ないことだ」

「それで?」

「そんなお前に俺はひかれたんだ。まぁ他にも理由があるがな」

「?」

「お前には遠回しに言っても分からないようだな。……秋が好きだ」

「好き?」

「あぁ。付き合って欲しい」

「えっ?柳くんが私を?いやいや間違いですよね?」

「間違いではない」

「私のことを……」




言葉が途切れて彼女は今の言葉を理解しようとしているようだ。




「私でよければ」

「フッお前がそういう確率80%だった」




彼女を腕に抱きしめれば、恥ずかしそうに顔を隠す。彼女の新たな一面を発見出来た気がして、また一つ嬉しく感じた。




(俺がこんなにお前に夢中になるなんて思ってもなかった。だがそれもいいと思った)


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