色々な短編 | ナノ
冷たく長い年月に

寂しげに


見つめた先には……。



冷たく長い年月に



「カタコーせんせっ」

「まぁたお前か!遊。片倉先生と呼べ」

「えぇ!それは出来ない相談ですね」

「……」




無言で睨まれたらとりあえず退散。

これが私の毎日の日課。

片倉先生は、新任で来たばかりのときに私のクラスの担任となった。
最初は古臭い先生と思ったけど、1年たったときには、私のなかに違う感情が生まれていた。

そして3年になった私はその感情をもて余している。


もうすぐ卒業という時期になって……。




「遊宿題貸せ」

「伊達くん。それは人に物を頼む態度じゃないよ?」

「Ah?なんか文句あるのか?」

「バッチリ」

「Shit!……小十郎をやるから見せろ」

「いやいやカタコー先生は物じゃないから。それにそんなカタコー先生はいらない」

「ほぉ」




伊達くんは、私の気持ちを知る唯一の人物。

片倉先生とは昔からの知り合いらしい……。

詳しいことは知らない。私はとりあえず伊達くんにノートを見せながら、

伊達くんの様子を眺める。これもいつもの光景だ。




「……そろそろ言ったらどうだ?」

「何を?」

「わかってんだろ?もうすぐgraduationだ」

「そうだね」

「Why?」

「んー相手にされてないから、困らせたくないんだよね。あと……まだ傍にいたい」

「……そうか。遊返す」




ノートを投げて返す伊達くんにいつもならイライラした。

今日はいつもより、モヤモヤした気持ちが渦巻いていた。

そんな様子を廊下であの人に見られているとは、このときは思いもよらなかった。






それから毎日の日課を淡々と過ごして1週間がたった。
私は片倉先生との日課を毎日こなしていたが、片倉先生は日々態度が冷たくなってきていた。

もうすぐ卒業なのに……

でも潮時なのかもしれないと心の中で思った。




「オイ小十郎」

「政宗様?」




学校ではあまり小十郎と呼ばれないことに不思議に思い政宗様を眺めていると、ギロリと睨まれた。




「お前どういうつもりだ?」

「はっ?」

「この頃遊の様子が変なんだよ」

「と言われましても……政宗様と遊の中を邪魔したつもりはありませんが」

「What?」

「ハッ。なんでしょうか?」

「俺と遊だと?」

「はい」

「はぁ……だからお前は……」



そうだ。

遊と政宗様はいつも一緒にいる。

俺が遊と話せば、政宗様は……。

だからあいつが近づいてこないように仕向けた。本当は最初からしないといけなかったんだ。
あいつは生徒なんだからな。




「小十郎。遊のことをどう考える」

「政宗様とお似合いです」

「……本当にそう思ってんのか?」




政宗は、小十郎の襟をつかみ睨みつける。




「………」

「俺は遊の泣く姿なんてごめんだ」




そう俺に吐き捨てると、廊下を足早に去って行かれた。
残された俺は、自分の黒い感情を押し込めようともがいていた。

放課後になっても、俺の心は晴れることなく、屋上で自分の心の整理をしようと一人向かう。

屋上は、静かで考えるには最適な場所だ。

そんなときギィっとドアが開いた。
そこには、俺の姿を捉え今にも泣きそうな顔をした遊が立っていた。



「政宗に聞きました」

「……」

「片倉先生は私なんか興味もないし、鬱陶しいって思ってたんだって」




ズキッと胸が傷んだ。

遊の言葉に心が止めろと叫んでいる。
アイツが俺を片倉先生と呼ぶだけで悲しくなる。

それなのに、これ以上聞けば…。




「片倉先生。迷惑かけてすみませんでした!私なんかにいつも時間取られて……本当にいつも分からなくて」




遊の声がだんだん小さくなる。
ふと俺は何をしているんだと思った。

何が教師だ。

結局教師になりきれてないのは自分で、こいつは立派な生徒になろうとしてるじゃないか。

だが立派な生徒なんて俺は望んでなかったんだ。




「待て遊」

「…っ」

「俺は、そんなこと思っちゃいねー。お前を鬱陶しいなんと思うはずがねぇんだ。遊は大事な……今は生徒だ」




ビクッと遊の肩が揺れる。生徒という言葉に反応したかのように。




「私は「今は、俺の言葉を聞け」




コクリと頷いたのを確認してから、話しを続ける。



「俺は生徒が卒業しても、これからもお前達……いや遊の先生だと言わねぇ。遊が卒業すればお前とはただの知り合いになる。意味分かるか?」



遊に問いかけるが、頭を傾げる様子に分からないかと息をつき、遊を自分の胸に引き寄せる。




「遊の心……いや遊を卒業したら俺にくれないか?」

「…!?……私?」

「あぁ俺も遊の先生からは卒業だ。その時は遠慮はしない。例え政宗様にでも……」

「政宗?ただの友達に遠慮なんていりません!私にも……卒業したら先生を下さい?」

「あぁ」




先生は私の頭を優しく撫で、ふわりと笑った。初めて見るその笑顔に私の心臓は爆発寸前だった。






卒業後


「遊」

「何ですか?」

「好きだ」

「なっ……」

「それと敬語は止めろ」

「……うぅズルい。でも……私も大好き」




小十郎さんは顔を赤くしたまま、私をそっと抱き締めた。




(「余所でやれ」「!!邪魔しないでよ政宗」「何いってんだ。ここは俺の家の玄関だ」「政宗様嫉妬は見苦しいですよ」「あぁもう勝手にしやがれ」私達は毎日幸せです。)


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