キメツ短編 | ナノ
02

「先生?今日こそ付き合って下さいよ」

「いや予定があるから無理だ」

「いつもそう言って付き合って下さらないじゃないですか」

「そうだったか?」

「婚約者には優しくしないとダメなんですよ?」

「·····?何の話しだ」

「付き合ってくれたら教えます」

「····分かった」

「じゃ場所は着いてからのお楽しみですよ。では放課後!」



彼女はそう言って、自分のクラスへと立ち去っていく。その姿を多くの生徒に見られていたとは思ってもみなかった。それが瞬く間に広がっていたことも。俺は知らなかった。知っていれば、ここまで拗れることはなかったのかも知れん。今となっては自嘲でしかない。


「ここは」

「毎週ここ来てるんですよね?知ってますよ」

「君に関係ないだろう?」

「そんなこと言っていいんですか?教えてあげませんよ?」

「····」

「とりあえず呑みましょ?ほらオススメは何ですか?」

「別に君と呑むつもりはない。食べたいなら好きに頼めばいい」


彼女は、一人でずっと飲み続けている。酔いつぶれるほどに。



どういうこと?今日は来れないって杏寿郎言ってたのに。女の人と二人っきりって?


杏寿郎からLINEで今日は急な飲み方が入ったから、行けないと珍しく連絡があったのが、2時間前だ。
だからと言っていつもの習慣でこの居酒屋に来ている。そして何故私の席の真後な訳?けっして聞き耳立ててる訳じゃない。勝手に聞こえてくるのだから仕方ない。


「私知ってるんですよ?佐伯さんでしたよね?」


私の話?私がどうしたの?


「花奈のこと調べたのか?」

「それは秘密ですよー」

「でっ佐伯さんはどうなんですか?私とは違うのですか?」

「花奈は、ただ····」



私はその続きが聞きたくなくて、彼らに見つからないように会計を行った。


ただ・・・そうだ。私と杏寿郎はただの幼なじみだ。そう言ったんだと思う。


どうして胸が痛いの?


ただって言われただけで、あまりにも遠い気がする。


ねぇ杏寿郎。苦しいよ








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