▼ ・好きな人 眺めててもきっと気づいてもらえない だから 「義勇くん!おはよ」 「あぁ」 「もう!それはおはようって返すべきでしょ」 「そうか」 この言葉足らずの男の子が、私の幼馴染冨岡義勇。まぁ朝一緒にいこうと言ったら、必ず待っててくれる優しい人なんだけど。 「花奈」 ボーッとしている間に、義勇くんが先に行っていたようだ。それでもちゃんと待ってるのだから、優しい。 「佐伯さん。いいですか?」 放課後知らない男の子に声をかけられ、誘われるまま屋上につく。 「うわっ。屋上寒いね。ごめんね。佐伯さん」 「大丈夫ですが、私に何か用でしょうか?」 「あぁまぁえーっとさ。冨岡と幼馴染だよね?」 「はい?」 「そうだよな。あのさ佐伯さん。好きなんだよね」 「えっ?」 「付き合って下さい」 「いや?えっ?」 「返事は明日またここで、よろしく」 名前も知らない彼は、走って屋上を出ていった。 「返事って?えっ?」 私は意味分からないまま、そのまま帰路に着いた。 「花奈が告白。俺は」 答えは出ないまま無言で、屋上から出ていく。誰にも見られないまま。 次の日の朝。義勇くんの顔を何故か見れなくて、スマホで先に行くと伝えた。 「どうしよう」 悩んだまま屋上に進む。 「佐伯さん。返事聞かせて下さい」 名も知らない彼は、寒い中私を待っていた。私の好きな人は、本当は 「すまないが、それは無理だ」 「えっ?」 突然上から聞こえた声に、顔をキョロキョロとさせる。貯水タンクよりヒラリと降りてきた彼に目を見開く。 「義勇くん」 「花奈を譲る訳にはいかない」 「そうは言っても冨岡!付き合ってないんだろう」 「だが、花奈が困ってる」 「だから何だよ」 「俺は困らせたくないんだ」 「義勇くん?」 「はぁ?でも俺は佐伯さんに聞きたいんだよ」 「あの!ごめんなさい」 「・・・はぁ分かってたけど、まっ仕方ないな」 と言って名も無き彼は屋上から出ていった。 「でっ?義勇くん。昨日のも聞いてた?」 「・・・」 「やっぱり」 「花奈が先に行ったから」 「えっ?」 「俺はお前に隣にいてほしい」 「それって?」 「花奈。好きだ」 「うん。私も好き」 ふっと義勇くんが笑ったのを見て幸せな気分で、帰宅した。 明日は一緒に行くぞ うん そうか やっぱり彼は言葉は足らないけど、私はそんな彼が大好きです。 |