キメツ短編 | ナノ
04



卒業生だからと言ってこんなとこまで、入る勇気なんてどこにもなかったのに。理事長室まで急ぎ足で向かうとニヤニヤと笑みを浮かべた、宇髄天元さんがいた。



「おう!おう!ちゃんと来れたじゃねぇか。嫁!」

「あぁもうですから、ってもういいです」

「良かったな。まだ始まってないぜ。今入ったとこだ」

「入ったとこ?ですか?」

「あんた当事者の一人なんだから、ちゃんと聞いとかないとあとから拗れるだろう?」

「はあ」


よく分からず返事をすると、ちょいちょいと手招きされる。少し近づくと杏寿郎の声が聞こえてきた。



「今回のことは始めに先生に断らせて頂いたのですが、理解していただけていなかったみたいです」

「多くの生徒が目撃してるが?それにうちの孫娘のどこが不服なんですかね?煉獄先生」

「まぁ全てですね」


即答した杏寿郎に少し頭を抱える。
隣では宇髄天元さんが腹を抱えて笑っていた。


「酷いですね。私と煉獄先生の中ではないですか」

「ただの同僚ですね」


この声は、あのときの女性だ。


「先生には、花奈との今の関係も話しましたよね?俺は俺の大事な人間を傷つける人は許さない」

「····どういうことですか?煉獄先生」


隣で一緒に聞き耳をたてていた、宇髄天元さんが何故か立ち上がり理事長室のドアに手をかけている。
あっと思った瞬間には遅かった。


「理事長。話の邪魔してすみませんね。とりあえず当事者と証拠です」


宇髄天元さんは私がドアから転がり入るのを、横目で見ながらクイッと顎で杏寿郎をさす。
そのまま杏寿郎を見ると、驚きで目を見開いていた。
あーでもあとから怒られるだろうなとか冷静に考えられる。自分にびっくりだ。

宇髄天元さんは、ボイスレコーダーを見せ再生を押した。



_____



「煉獄先生に付きまとっている女ってあんたでしょ?」

「どちら様でしょうか」

「この前煉獄先生と私の会話聞いてたんですよね?なら付きまとうとか見苦しい真似しないで下さいね」


それだけ言うと彼女は、去っていった。
何だったのか私には、分からずそれでもあの女の人の言うとおりにしてしまう私が少し悔しかった。



___


「あぁこれだけじゃないんで」


そう言うと宇髄天元さんは再び再生を押した。
そこには、杏寿郎以外の男を誘惑している会話が多く入っていた。宇髄天元さんのことも誘惑していたようで、そのボイスレコーダーに録音されていた。


あのときの会話といい、誘惑の会話といい。この宇髄天元さん敵に回したらダメなやつだと悟った。


「俺···いえ私達が集めた証拠は写真を含めてこれだけですが、このことをどう処理されますか?理事長」

「はぁそうか。孫娘だからと少し甘やかしすぎたようで····申し訳ない。そちらのお嬢さんにも謝罪します。申し訳ありませんでした」

「わっ私は大丈夫です」


理事長は私に深く頭を下げた後、彼女の前まで行き頬をパシンと叩く。


「お前には失望した、二度と私の前に現れるな」

「御祖父様!!」

「でていけ!」


理事長が冷めた目つきで彼女を諌めると、彼女は涙を浮かべながら理事長室をあとにした。

はっと我にかえると、理事長に頭を下げ急ぎ理事長室をあとにした。杏寿郎に捕まるまえに。









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