01
今できることをしよう
一つずつ
目が覚めたときには、自分の布団の中で恥ずかしい気持ちと情けない気持ちでいっぱいになった。
「美紅。起きているか?起きていたら、千寿郎が朝餉を作ったからおいで」
師範の声に寝過ごしたことに気づき、身支度を整え顔を洗いに走る。その間誰にも会わなかったことが幸いだ。寝癖を直し、顔を拭くと師範と千寿郎くんがいる居間へと小走りで向かう。
「ゆっくりで良かったのだが、また急いできたな」
ハハハッと笑いとともに師範は私の髪を整えていた。
「えっ!?あのおっおはようございます」
濡れた髪で走ったことで、また髪がグチャグチャになっていたのだろう。それを正されて恥ずかしさに挨拶もだんだん声が小さくなっていった。
「あぁおはよう。よく眠れたようで何よりだ」
「美紅さん。おはようございます。もう大丈夫ですか?」
「師範、千寿郎くんご迷惑おかけしました。ゆっくり寝たので、体調も良くなりました。少し頭も冷えたみたいで・・・」
「良かったです」
千寿郎くんは、師範と顔を見合わせるとにっこりと笑ってご飯を促してくれた。
「さぁ冷めぬうちに、いただこうか」
「はい!千寿郎くん、ありがとう。いただきます」
「いいえ。では僕もいただきます」
3人揃ってご飯を食べ始める。
師範はいつも通り、うまい!うまい!と繰り返えしながら、何十人分あったであろう食事を、数分で食べ終え、お茶で一服している。
私もお茶を飲み終えると、おそるおそる師範の顔を覗き見る。
昨日のこともあり、鍛錬禁止と言われるのでは?と少し緊張している。
「あの、師範?」
「何だ?」
「えっとその…」
「軽く手合わせをしようか」
「えっ!?いいんですか?」
「俺が見ているときだけだからな」
「はい!」
鍛錬禁止令は出されているが、師範と手合わせして貰えることが嬉しく食い気味に話す。
師範と手合わせすると、色々学べるので修行の実感が湧くのだ。
「準備してきます!」
「あぁ」
師範が頷くのを確認すると、バタバタと自室に戻り、準備を整え庭へ向かう。
「まったく、君はせっかちだな」
苦笑するように、師範も外に出てくる。
それからしばらく師範と手合わせを続けた。
これが私の自信に繋がることを、師範は誰よりも分かっているのだと改めて思った。