月がみている | ナノ

01






「美紅!起きろ!」

「はい!師範」


目を開けると師範が覗き込んでいる。


「感情的になったら、勝ち目はないぞ!ちゃんと呼吸を整えろ。無事に帰ってこい美紅!!」



師範の言葉にハッとし、再度目を開けると鬼が悠々と未だに語っていた。時間としてはまだそんなに経っていないのだろう。狐の少年が、私を支えている。鬼に気付かれないように狐の少年に目配せすると、狐の少年は静かに私を寝かせて、刀を握り鬼に向き直った。
ふと隣を見ると、弱腰少年が少しずつ後ずさっている。
あぁ逃げるのか、戦わないんだ。
この弱腰少年は多分最終選別生き残れないなと人事のように考える。


ダンっ


目を離したすきに、少年が振り飛ばされていた。


「また鱗滝のガキが死んだ。あいつまた自分のガキが帰ってこなくて、どう思うんだろうな。どんな顔するんだろうな。あぁ見たかったな。見たかったな」


狐少年は頭から血を流し、狐の面が割れていた。鬼が手が伸ばしている。ヤバい。そう思ったときには身体が動いていた。


「炎の呼吸壱ノ型 不知火(しらぬい)」


鬼との間合いを詰めて技を繰り出す。鬼は予想していなかったようで、手で全てを固めていた。
狐少年もはっとして飛び起き、再び刀を握りなおしていた。


「まだ生きていたのか。この女のガキ。まだ動けるなら遊びがいがある」

「狐少年!最初に言ったとおりにするから、お願い」

「はい!」


鬼の手は素早く攻撃を仕掛けてくる。それを斬りながら、狐少年に鬼の隙をつくのが1番妥当だ。
鬼の手は素早くはないが、数が多く避ける間に擦り傷が出来る。それでも囮になると私が言ったのだから、彼が狙えるようにしなくてはならない。


狐少年の空気が変わった。私が避けたところに、間合いを詰めていたようだ。


「お前はここで倒す!全集中、水の呼吸、壱ノ型水面斬り」


鬼はニヤリと笑い、自分が斬られるとは思っていないようだ。自分の力を過信すると、足元を掬われる。彼は同じ過ちを繰り返している。そう彼の言う元柱鱗滝さんに捕まった時と同じだろうと思ってしまった。


鬼の首が少年の繰り出した技と同時に落ちる。やっぱり彼なら出来ると思った。私は、首が斬り落とされたのを見届けた後、刀を鞘に納める。
多分この鬼以上に強い鬼のは出てこないだろう。とりあえず一息つけそうだと、深く深呼吸した。






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