月がみている | ナノ

修行の日々




身の丈に合わない恋をしている


そう自覚しているのに


逃げ出せない迷路のよう




「まだまだ踏み込みが甘い」

「もう一本」



私は炎の呼吸煉獄杏寿郎の弟子だ。修行を始めて1年になる。そろそろ鬼殺隊に入るための最終選別を受けにいく手筈となっている。
姉弟子でもあった甘露寺様じゃなかった。蜜璃ちゃん(そう呼べと言われた)よりも遥かに弱い私が生き残れるようにと、毎日修行をつけてくれている、しかし不安が減ることはない。


「今日はここまで!っとそうだった。言い忘れていたが明日は任務のため明後日に帰ってくる予定だ。無茶な修行だけはするなよ?」

「えっ!?はい」


色々見透かされているようだ。よく分かっていらっしゃる。


「大丈夫だ。美紅が出発する前の日には必ず帰ってくる!そう約束しよう」

「はい。気をつけて下さい。師範」


私は箕島美紅。
昔家が鬼に襲われ、家族全員が鬼に殺された。その際に鬼殺隊の柱様に助られ、鬼殺隊に入るべく修行を受けている間に、縁あって炎柱煉獄杏寿郎様の継子となることになった。
炎の呼吸は身体に合うようで、全てのを型を扱えるまでに成長できた。……そう。ただ使えるだけに過ぎない。今の私は、普通の鬼も倒せる自信はない。


「美紅さん兄上が先に湯浴みをと・・・どうされました?」


縁側に正座しコトンと首を傾げる姿は誰が何と言おうと可愛い。そういうところを見てると自然と入っていた力が抜けていくのを感じる。


「あっ千寿郎くん。なんでもないよ?」

「本当でしょうか?美紅さん。最終選別が近づいてから難しい顔をされている気がします」

「えっ?」

「兄上も心配されていました」

「そっかぁ。気をつけるね」

「いえ!そうではなく」


千寿郎くんは、グッと意気込むが私の顔を見て再度はぁと息を吐き、眉を下げた状態でコクンと頷くと夕食の準備に行きますねと去って行った。


私は千寿郎くんの言う意味なんて少しも理解できていなかったのかもしれない。
理解できていれば、師範もあんな顔しなかったのかもしれない。



(「では行ってくる!千寿郎!くれぐれも美紅が無茶をしないように見張っていてくれ」
「はい。私では止められないかもしれないので早めに帰ってきて下さい」
「あぁなるべく早く帰る」
こうして私をおいてけぼりにした会話の後、師範は任務に出かけていった。)





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