※嫌だと思った
眩しい笑顔をみた瞬間。
私の足は回れ右をしていた。
とりあえず今日は会えないと思っていたから。
煉獄先生は多分変に思っただろう。
それでも今は無理な話だった。涙が止まらなくなる自信があったから。。
そのまま逃げるように寮に帰った。
一人部屋だったことが救いだと思った。
制服のままベッドに横になった。皺になるとかは今は考えたくない。
とりあえず明日学校が休みだったことを頭の片隅に、そのまま眠りについた。
「何で?何で?帰ってくるって約束したじゃないですか」
「あぁそうだな」
「好きなんです。師匠」
「あぁ俺も好きだ。あき。なぁ名前で呼んでくれないか?」
「杏寿郎さん。そんな最後みたいなセリフ言わないで下さい。嫌ですよ」
「あぁすまない」
「謝るのも嫌です。お願いです。杏寿郎さん。死なないで」
「あぁ」
血だらけの手で私の頭を優しく撫でる煉獄さんは、優しく微笑むとだらりと身体が崩れていった。
「杏寿郎さん!嘘?嫌ー」
そこで私の意識は戻ってきた。
何今の、心臓がバクバク言っている。
震えが止まらない。
煉獄先生だけじゃなく見慣れぬピアスをした少年と猪頭の少年が一緒にいた。
何故か自分の前世の話だとすぐに分かった。
それと同時に、煉獄先生のことが好きだったことやあのまま私は、気絶したことなどを思い出す。
そのあとはどう生きていたのか、少しも思い出すことはなかったが、煉獄先生と過ごしたことだけは鮮明に覚えている。
そのまま寮に籠もる訳にも行かず、街にでてみる。
道行く人が幸せそうで、私の心が沈んでいることを改めて実感した。
「なぁあんたそんな顔してどこ行くん?」
「えっ?」
知らないお兄さん達が私の周りを、囲んでいる。
「家に帰るとこなので」
とっさに出た言葉で去ろうとするが、お兄さん達は逃すことなく私の道を遮る。
「そんなこと言わないでさー。ちょっと休憩しよ?このま帰ったら倒れるよー」
そうかもしれないが、ノコノコついていくほど馬鹿でもない。
「どいてください」
「そんな怖い顔しないでよー」
嫌気がさして、無視して進もうとしたところ手を取られた。
「止めて下さい」
「そうだ。寺沢に触れるのを止めてもらおうか」
その一言に期待したような目線で、顔をあげた瞬間。思っていた人物ではなくて、少しショックを受けた。
「何だ、あんた」
「お前達に名乗るつもりもない」
冨岡先生は握っていた手を強めたのだろう。顔を顰めたお兄さん達は悔しそうに去って行った。
「何をしている」
「えっ?」
「お前は学習能力がない。昔から気をつけろと言っていただろう」
「・・・・昔?」
その一言にハッとした冨岡先生は、顔を反らし黙った。
どういうことか分からないはずなのに、冨岡先生の顔をみてパズルのピースが埋まった気がした。
送るから、帰れ
先生。。。
帰りたくないと思った。