謝ってもいいですか
言葉がでなかった
冨岡先生だけが知っていると思っていたのに
「君は昔と違って冨岡に好意を抱いているだろう?」
唐突に告げられた言葉に、意味が分からなかった。
「私は、そういう訳では」
「君は冨岡を頼っているだろう?」
どう言えばいいのか分からなかった。
「あのあとも冨岡があきを救ったのだろう?」
「煉獄先生いつの話をしているんですか?」
昔といってもここ最近の話という可能性もある。心臓は、私のものではないかのようにバクバク音がしている。
「俺は記憶がある。あきと今世で会う前からな」
「えっ?」
「この学校では半分ぐらいの人間は記憶がある。冨岡はあまり人と深く付き合っていないから気づかなかったんだろう」
「なら煉獄先生は」
「もう名前では呼んでくれないのか?」
「呼んでも、いいんですか?」
「杏寿郎さん」
「あぁ。長いことお互いに待ったな」
私は杏寿郎さんの顔がぼやけて見えなかった。それでも私の師匠煉獄杏寿郎が此処に生きていることを確かめたくて、手を伸ばす。
杏寿郎さんは私の手を取ると抱き寄せた。
「立派に生きたんだな。待ってるなんて言ったのに迎えに行けなくて悪かった。だが約束は守っただろう?」
杏寿郎さんの言葉に何も言えず、首を縦に動かす。
「もうそろそろよろしいでしょうか?」
いないと思っていたしのぶちゃんがゴホンと咳払いをするとフワリと杏寿郎さんの腕の中から私を救出していた。
「胡蝶かえせ」
「嫌です。私のこともちゃんと思い出して貰わないと困るのですよ?」
「しのぶちゃん?」
「ふふふっ。早く私のことも思い出して下さいね?あきさん」
私の記憶が完璧ではないことを気づいての台詞だろう。コクリと頷くと、しのぶちゃんは満足したように私を離すと杏寿郎さんの方へ押す。
「これ以上の野暮はする気もございませんわ。ですがまだここは学校ということを忘れてはいけませんよ?」
しのぶちゃんはしっかりと釘をさすと、にこやかに教室から出ていった。
「さて俺達も移動することにしよう。今日は全てが分かるまで離さないからな」
その台詞に嬉しいような怖いような気がした。
あっというまのようで、とてもとても長い一日が終わりを告げた。
これからの未来は
誰も知らないけれど、
彼と私の運命はいつまでも廻ると思っている
さてさて、全ての答え合わせといこうか?
えっ!?
今までのあきの行動を振り返らないと前に進めないよな?
昔と変わらず私をからかうときは、すごくイキイキしているなと心からそう思った