廻る廻る | ナノ

いなくなっても傷つかないで




逃げてごめんと


伝えられない


放課後クラスメートは全員部活動に行ったのだろうと思っていたところに、声をかけられる。


「ねぇあきさん。姉さんからちょっと小耳に挟んだことがあるのですが、よろしいでしょうか?」


しのぶちゃんはいつもよりも怖い顔をしていた。


「嫌と言ってもだめですか?」

「無理ですね」

「えっと?何でしょう?」

「・・・何で私に何も言ってくれないのですか?」


多分しのぶちゃんは、全てを知っている。


そう私が転校手続きを勧めていることを。


「ごめんなさい」

「私はその言葉を聞きたい訳ではないのですよ?」

「でも、私は「私は貴女とはまだ会ってまもないのかもしれませんが、親友だと思っていたのですが」

「私もそう思ってるよ」

「でしたら何故教えてくれないのですか?」

「しのぶちゃんは何も知らない方がいいと思う」

「そうですか。でしたら煉獄さん。いえ煉獄先生になら話せますか?」


その瞬間後ろに煉獄先生が私の顔を怒ったような瞳で見ているのが分かった。


「俺は寺沢の担任だと思っていたが、よもやよもやだ」


煉獄先生が怒っているのは分かったが、昔と変わらない口癖に少しホッとしたのは内緒だ。


「煉獄先生。お世話になりました」

「違う!俺はそんな言葉が聞きたい訳じゃない」

「何を聞きたいのですか?」


私は冷静だったと思う。
煉獄先生にもしのぶちゃんにも何にも言わないと思っていたから。


「何故またいなくなる」

「えっ?」


思っていた言葉とは、違うことに頭を傾げることしか出来なかった。


「そんな顔をするな。俺はあきを責めてる訳じゃない」


煉獄先生があきと呼んだことに驚き目を見開く。


「俺も我慢強い方じゃないようだ。あきが幸せならいいと思っていたのにな」



煉獄先生の言葉は今の私には理解できないものだった。


どうして?


そんな切ない瞳で私を見るの?


もう昔の彼とは違うはずなのに。







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