椿雨 | ナノ



01


昔を思い出すのは


もう止めよう




01






もうこの空を何日も見ている気がする。本当は帰りたいのに、帰ることが出来ない。
私には、もう何処にも居場所なんてない。




「秦野?」

「……えっ?」

「気分でも悪いのか?」

「そう言うわけではないんです。気にしないで下さい」

「……お前の気にしないでという言葉は、聞き飽きた」




砕蜂が呆れて何も言わなくなったことをいいことに、燈はホッと息をはいた。二番隊に入り、早いことで15年たつ。今では砕蜂の推薦により六席として働いている。




「忘れるところだった。……合同任務の依頼が来ている」

「どの隊とでしょうか?」

「十三番隊だ」




ビクと肩が震える。ふと昔を思い出していたからだろうか。

……彼女のことを。

そして一緒にいたいと願った彼のことを。




「聞いているのか?」

「えっ?」

「今回はお前も参加だ。上官が足りぬらしい」

「……は、はい」




はいと返事したものの、実際は嫌だと言いたかった。あの子から彼に知られるかもしれない。考えるだけで怖い。


もしかしたら彼は、私のことなど覚えていないかもしれない。


それでも、あんなふうに別れてしまった手前、のこのこと顔を出せるはずもなかった。




「では頼んだぞ。この書類を届けるついでに、合同任務について聞いてきてくれるか?」

「分かりました」




合同任務について聞くということは、彼女と顔合わせをするということだ。
……いや。そもそもニ番隊と十三番隊との合同だからといって、彼女がいるとは限らない。ましてニ番隊は隠密機動隊だ。十三番隊の前に顔を出すとは考えにくい。



そんな考えなど知らぬとばかりに、十三番隊での合同任務説明が始まった。




「君はニ番隊の六席だったかな?」

「はい。秦野燈です」

「そうか私は十三番隊隊長の浮竹だ」

「はい。よろしくお願いします」

「あぁ。とりあえず本題に入ろうか。今回の合同任務は討伐じゃないのは聞いているかい?」

「いぇ砕蜂隊長からは上官が少ないとだけ聞きました」

「そうか……。実は我が隊の上官が五席と10席だけで……あとは平隊士になるんだ。あぁでも平隊士とは言っても朽木がいるから、上官3人と平隊士3人みたいなものだな」

「くっ……くちきさん?」

「あぁ六番隊の白哉の義妹だ」

「……そうですか」




あとの話しは頭に入ってこなかった。事務的に話しを終え、足早に十三番隊を後にした。


顔合わせなど出来るはずがない。


私は彼女にも合わせる顔がないのだから……。




(私には、生きる価値なんてないのかもしれない。そうあのときから思っていたのに……)




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