▼ 01 1日で 変わってしまう 夕焼けのグラウンド、君の後ろ姿 買い物に行った次の日。私は政宗に買ってもらったヘアピンをつけ、ウキウキしていた。学校に着くと、ほとんどの生徒がチラチラと見ている。気のせいとは思えないぐらいの人数だ。それは、教室に近づくにつれ増えていく。今日は嫌な予感がすると思いながら、教室に入った。 「おはよう。真那」 「うわっ。……おはよーかすが」 周りの視線から逃れようと、自分の世界に入っていたため、かすがの声にビクッとしてしまう。 「どうした?今日は何か元気がないように見えるが……」 さっきまで元気だったよ。なんて言える訳もなく。曖昧に笑って誤魔化す。かすがは、納得がいかないのか、私をじっと見ていたが、諦めたのか何も言ってはこなかった。 「おはよー。真那ちゃん」 「あっ……おはよう」 「うん。それにしても、どうやって政宗おとしたの?」 「えっ?」 「噂になってるよ?昨日政宗と真那ちゃんがデートしてたってね?」 鋭い目付きで、私を見る猿飛くんに一瞬昔を思い出す。あぁやっぱりこういうことになるんだと思った。生徒の視線もコレな訳だ。私みたいな容姿の女がイケメンに近づけばこうなる。 私は一人でいた方が迷惑もかけないのかもしれない。大切な友人に……迷惑だけはかけたくないのだから。 「猿飛!やめろ」 「かすが?かすがは気にならないの?あの政宗をどうやっておとしたか」 「お前は最低な奴だな。やはり前から全然変わらん」 「かすが?」 「人には、色々事情があるんだ。むやみやたらに突っ込むな!」 「……俺は、そう簡単には変われないよ。そっだね!ゴメンね真那ちゃん」 猿飛くんが何か小さな声で言った気がするが、私の耳には届かなかった。 「……気にしてないよ?」 私は、気にしてない。気にしてなんかいられない。 と思ったのに、それはすぐに覆ることになった。 猿飛くんとの話しが一段落したため、鞄の荷物を机に片付けようと手を入れた瞬間紙のようなものが、手に触れた。何も入れてなかったはずとばかりに紙を見れば、一言『放課後屋上にて。政宗』と書いてあった。政宗からの手紙な訳がない。 だって今日政宗は来ない。昨日『明日は会社の会議に参加してくる』と言っていた。来るとしたらメールが来るだろう。 でも私はこの手紙を知らなかったことには出来ない。そう心に決めたときには、結論が出ていた。 放課後のSHRが終わると、かすがに先に帰ってもらい屋上に足を向ける。 「すみません。遅くなりましたが、手紙の主様は来てますか?」 屋上には、数名の女子がいた。彼女達は私の言葉が予想外だったらしく、驚きで目を見開いている。 「ご用は?」 「なっ何で?」 「?」 「何で来たのよ。分かってて、馬鹿にしたの!?」 「いえ……行かないのは失礼かと思ったので」 「ばっ馬鹿にしないでよね」 「そうよ。政宗サマや佐助くん。それに、彰先生に気にして貰えたからって!」 政宗やお兄ちゃんは気にしてるというより、私が何かしでかさないのか気がかりって感じですよ。猿飛佐助くんは、逆に敵視してますから。 と言えたならどれだけ楽なのだろう。 「ちょっと聞いてるの?」 「あんたのそういった態度ムカつくのよ。あの人達はあんたとは違うのよ!?」 「お金持ちでこの学校でも別格なんだから」 「はぁ」 生返事をすると、気に入らないとばかりに一人の女生徒が手を降りあげた。とっさに痛みによる衝撃に顔を強張らせたが、いつまでも痛みはこなかった。 . |