Real World | ナノ
01


貴方とは


本当に


仲良くなれる気がする




自転車2ケツの登下校




あれから呼び出しもなく、平和な毎日を過ごしていた。

今日は、いつも一緒に帰るかすがは、謙信先生の家に行くということで、猛ダッシュで帰って行った。

あの速さは誰にも真似できないと思う。

かくいう私は、日直だったため、現在黙々と作業をしている。

その理由は、相手があの猿飛佐助くんだからだ。
そして、何事もなく日誌を除く作業は終了した。



……よくやったぞ。私。あの沈黙は苦しかった。



『日誌は、私が書いて出しとくから』と猿飛くんを部活に追いやり、日誌に取りかかる。


猿飛くんは何部かは知らないが、部活に入ってるらしい。


そして日誌に没頭していると、気がつけば辺りは真っ暗になっていた。


思っていた以上に日誌は、手強い敵だった。



決して今日の出来事を何にも思い出せなかったのではないと思いたい……。




「こんなときにお兄ちゃんがいてくれれば」




と一人ため息をつくが、『俺今日は頑張って夕飯作るから楽しみにしてて?』と兄が意気込みを入れていたので、学校にはいないだろうと想像できる。

観念して帰ろうと足を踏み出すと、後ろから呼び止められた。




「……もしやそこにおられるのは真那殿ではござらぬか?」

「へっ?」

「真那殿?某でござる」

「某?もしかして幸村くん?」

「やはり真那殿でござったか。こんな時間に帰宅でござるか?」

「あっ……えっと日誌と格闘してまして…」

「格闘?……真那殿は日誌相手に戦うのでござるか?ふむ。日誌が闘いを挑んでくるとは……恐るべしでござる」

「いぇいぇ貴方の考えが恐るべしです」

「ところで女子がこんな時間に一人で帰るのは危のうござる」

「私スルーされてますね」

「どうしたのでござるか?」

「いえ……」

「ならば良いが、気分でも害されたのであれば、仰って下され」

「別に…それより、幸村くんはこんな時間までどうしたんですか?」

「某は、お館様との修業があったのでござる」

「修業?」

「お館様と拳で語りあってきたのだ」



あの恒例とも言える。殴り愛ですか……。



「拳での語りあい、長かったんですね」

「サッカー部の練習の後だったからそこまで長くは、なかったでござる」

「剣道部じゃなかったんですか?」

「剣道部?某は最初からお館様が顧問をしておられるサッカー部だったが……どこからそれを?」

「猿飛くんが言ってましたけど」

「佐助が?まったくあやつは、何を考えておるのだ」

「いやえっと考えてるかも……というように言っていただけですので」

「……某は一度も剣道部のことは言っておらぬ」

「……」

「……」

「えっととりあえずサッカーで遅くなったんですね」

「そうでござる」



まぁ他の部員よりも遅かったのは、殴り愛をしてたからで間違いはないのだろうけど……。



「某真那殿を家まで送り届けるでござる」



いきなりの発言に私はポカンとしてしまった。



あのイケメン集団の1人である幸村くんに送ってもらう?

この前のこともある。


遠慮したい。




「こんな時間に某と出会ったのは、何と言う偶然!女子をこのような時間に一人で帰らたとなれば、某は男として、情けないでござる」




そこまで大げさにしなくても、知らなければ誰もそう思わないと思いますが……。

なので、気にしないで下さい。




「真那殿聞いているでござるか」

「はっはい!」




自分の思考がばれたのかと胸がドキリと嫌な音を立てたが、幸村くんはただ話を聞いているかと言ったようでホッとする。




「では帰るでござる」

「えっ?」

「何か不都合でもあるでござるか?」




こんな純粋に送ってくれるという幸村くんの行為を断る?

それの方が難しそう。




「じゃお言葉に甘えて」

「任された」




実際怖かったので、良かったことにしよう。

帰り道では、武田先生のことや猿飛くんの話を聞いた。

猿飛くんが幸村くんと仲の良い理由を聞いたときは、聞かない方が良かったのではと後悔した。



猿飛くんとコタは、少し似ている。そう思ったから……。



コタの近くにいた私は、コタのことはよく分かってるつもりだ。

ただ似てるけど、猿飛くんとコタは違う。猿飛くんは、環境はコタと同じでも、性格は私と似ている。




「あっ私ここなんで」

「むっ?ここに住んでおるのか?」

「はい」

「政宗殿のマンションの側なのでござるな」




その瞬間ドキッとした。

政宗の家を知らなかったからなんとも言えないが、また政宗に迷惑かけちゃうと無意識に考えてしまう。




「……そうなんだ」

「どうしたのでござるか?」

「何でもないです。送ってくれてありがとうございました」

「無事にお家に到着できてようござった」

「ふふふっ大袈裟だよ」

「っとそろそろ帰らねば、佐助にどやされるでござる」

「そっか!」




もう一度お礼を言うと、幸村くんは帰っていった。




(お兄ちゃんは知ってたのかもしれない。政宗と私の家が近くだと……。だから、ここにしたのだと……そう思わずにはいられなかった)


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