▼ 04 「あっれー?かすが!?」 「さっ猿飛。何故キサマがここにいる」 「同じクラスだからでしょ?それに同じ委員みたいだし?」 美人さんはかすがさんという名前らしく、実は私の席の後ろだった。そして、衝撃的なことに、あの顔が無駄によさそうな男(←失礼)2人も保体委員になっていた。 「何故キサマが負けた。キサマなら勝てただろうが!」 「あぁそれなら男子は『出さんが負けよ。文句なし』ってやっててさぁ。俺様鬼の旦那に話し掛けられてる間に負けちゃった。アハー」 2人を一度に負けさせるとは、男子頭いい! 「だから鬼の旦那も一緒なんだよねぇ。かすがは誰と一緒なの?」 「貴様は今すぐ黙ってココから去れ。そして私の前に姿を見せるな。まったくキサマのせいで、コイツと話せないじゃないか!」 かすがさん。コイツとは私のことでしょうか? 「ひっどーい。かすが俺様傷つくー」 「あの……」 いつまでたっても話しかけられないよりかは、いいはずだと思い、2人の会話を遮るように声をかける。 「すまない。こやつのせいで……外部受験者とは、お前のことだろう?」 美人さんであるかすがさんは、無駄に顔のいい隣の席の人を指差し睨みながら話し始める。 「はい」 「あぁ私は、かすがだ。委員も同じで席もお前の後ろだからよろしく頼む」 「城井真那です。よろしく。………ってかすがさん?」 「あぁ」 「上杉先生家の近くのかすがさん?」 「謙信様を知っているのか?」 「俺様全然話し分かんない!どういう意味ー?」 「えっと……謙信先生は知ってます」 「お前何者だ?」 鋭い視線が自分に突き刺さる。多分2人とも私を敵視しているのだと思う。 ……視線が苦しい。 「……以前謙信先生に家庭教師をしてもらいました」 顔を俯かせ、伺うように答える。 「家庭教師。あぁお前が謙信様の言う真那か」 「謙信先生が?」 「『面白い子の家庭教師をしています。仲良くしてあげて下さい』と言われた。あの時は意味が分からなかったが、こういうことか……」 「えっとよろしくお願いします」 とりあえず深々と頭を下げると、慌てたようにかすがさんが私の顔を上げさせる。 「仲良くする。だからそんなに畏まるな」 照れたように、顔を逸らしながら言うかすがさんが可愛いと思い、笑顔で『はいっ』と返事をした。 「ふぅん。そういうこと……。あっ俺様猿飛佐助。隣の席だよね?よろしくー」 「……はい。お願いします」 笑顔なのに、やっぱり違う。この人怖いと思った。 他の委員も決定したようで、休憩となった。今日の授業は、これで終わり。 お兄ちゃんにメールしてみよう。……はっきり言うと、猿飛くんからの視線が痛いんです。ここにいたくない。あっ携帯持って屋上に行こう。でも帰りのHR始まる…。仕方ないよね。 席を立ちルンルン気分で屋上へと向かう。 『お兄ちゃん今日の夕食どうする?って出来た!送信』 屋上に着きすぐ携帯を持ちポチポチとメールを打つ。屋上に来る原因となった人が来るとも知らずに、私はお兄ちゃんからの返事を待っていた。ぼぉーっと空を眺める。 ギィー。 屋上のドアが開く。好奇心で振り向いたことが、最悪の事態を招いたと思う。 「あっ……」 そこには、先ほどまで私に痛い視線を浴びせていた猿飛くんが立っていた。 「あっれー?城井さん?そろそろ帰りのHRが始まるよー。こんなとこにいていいの?」 「えっと」 「サボり?」 言葉を探していると、遮るように、尋ねられる。頭を上下にコクっと動かすと猿飛くんも納得したように頷く。 「へぇーじゃあ俺様お邪魔だし退散しよっと」 今彼がここにいるということは、猿飛くんもサボりで間違いないと思う。それなら私がここに長居する理由もない。猿飛くんは教室にはいないのだから。 「猿飛くん」 「何?」 低い声で言われたことに疑問を感じたが、反応を示さないように注意し、猿飛くんの顔を見ながらゆっくりと話し始める。 「えっと……いろいろと失礼しました」 早口で話し頭を下げ、屋上から足早に去る。 お兄ちゃんからのメールなんて後回し。教室に帰る方がいいに決まってる。 教室に帰ると、かすがさんに『どこに行っていた?』と話しかけられた。屋上でサボろうかと思ったが、人が来たので帰って来たと伝えれば、かすがさんは『次サボるときは言え。心配する』と綺麗な顔を歪ませ、話してくれた。 (心配されるってこしょばゆい。ムズムズする。でも堪らなく嬉しい。だから次は猿飛くんが教室にいるときにサボりに誘ってみようと思った) . |