Real World | ナノ
05


「スッ……スゲーぜ真那ちゃん。テニスの経験あるのかい?」

「いぇソフトの経験しかありません」

「マジ?」

「嘘は言いませんよ。あぁーちょっと作戦タイムいいですか?」

「いいぜ!なぁみんな?」




周りを見回すと頭を縦に振る生徒の姿が目に入る。




「という訳だからいいぜー!」

「ありがとうございます」




深々と頭を下げた後、俺様達の元に戻りしゃがみこむ。




「作戦会議でござるな!某……「旦那うるさい」




ペシッと手で口を塞げば、シュンとなる。




「早速なんですが。この空き缶倒し……勝てると思いますか?」

「当たり前でござる」

「そうだねーここまで来たら勝たなきゃねー」

「そうですか……なら必勝法があります。ただし狙えないと意味がないんですが」

「任せるでござる」

「そうそっ!不可能はないからね」

「分かりました。方法は簡単です。私が今回倒すことが出来たのは、空き缶上部の端を狙ったからなんです」




真那ちゃんは俺様達が分かるように丁寧に教える。分かったからといって、実行出来ないのが普通だけど。俺様は、実行出来るし。真那ちゃんが出来て俺様が出来ない訳ないじゃん。



「あともうひとつ方法があります。それは、缶の側面に思いっきり当てる方法です。この2つの方法で確実に倒れると思いますよ」




笑顔で言う真那ちゃんに感心しそうになったが、2つめの方法を俺様的に言わせれば、『力ずくで倒せよ。そのくらい簡単に出来るだろ?』って感じだ。



やる気満々で人を疑うことを知らない旦那には、わかんないだろうけど。



「さてと。じゃ!俺様がいっちょ派手に空き缶飛ばしてくるか」




さっと立ち上がると旦那から期待の眼差しを浴びる。テニス部に向き直るとニヤッと笑われ一瞬ムッとするが、次の瞬間には余裕の笑みを浮かべてやると相手は、ボールとラケットを持ち用意してあった空き缶を綺麗に倒した。



ありゃりゃホントに物好きな奴らだねぇ。



俺様は笑みを浮かべたまま、相手と同じようにボールとラケットを持ち、力をこめてサーブを打つとガンという鈍い音をたて空き缶が飛ぶ。石やら砂が零れて見えたのは間違いじゃないだろう。



それにしても変だ。空き缶にいくら石が入っていたからと言っても、空き缶が倒れる音はテニス部と俺様達は一緒のはず。しかしテニス部が倒したときには甲高いカンっという音が響いていた気がする。



まぁ今のでたいていの奴らは気づいただろうけどね。



「佐助の強力なサーブによって空き缶は倒れたーって言いたいところだけど。ちょいっと待ってくれよ?」




慶次は俺様が飛ばした空き缶を拾いあげ、次にテニス部が倒した缶を持って帰ってきた。




「さてちゃんと見ててくれよな」




2つの台の上に空き缶を逆さまにして持つと砂やら石がドボドボと落ちていく。明らかに違うのは、テニス部の当てた缶と俺様の当てた缶の砂や石の量だ。




「テニス部ー!平等ってのは出来なかったのか?テニス部の癖に俺達に勝てないって思ったんだな。情けない奴らだぜ」




全生徒が責めるようにテニス部を見れば、テニス部長が深々と頭を下げ『これで勘弁してください』と泣きながら話す。




そんなこんなで俺様達参加の部活動紹介は終わった。



結局俺様部活動決めてないし…。前と同じバスケ部でいいやと考えを巡らせながら教室に戻った。



「ご苦労様です猿飛くん」

「んっ?」

「猿飛くんが空き缶を吹き飛ばしてくれたおかげで1回だけになったので……」

「あぁどういたしまして」

「ホントは真田くんが吹き飛ばしてくれるんじゃないかって最初は期待してたんですが、真田くんに回りませんでしたね」

「まぁね。でも俺様旦那にもう1回やりたかったって怒鳴られたよ」

「そうなんですか!?ふふふっやっぱり真田くんって熱い人みたいですね」




彼女の笑う表情に少し驚いた。俺様のことを嫌っている彼女が俺様の前では笑わないんだろうと勝手に思っていた分不思議で堪らなかった。




(「佐助ー!今一度テニス部と勝負しに行くぞ」「えっ?まじ?わざわざ?」「当たり前でござる!見ていて下されお館様ー!」)


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