小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 敬語の理由

「ひーかーる!」



私がひょこっと、部室を覗くと幼なじみであり、私の好きな人でもある光がいたので声をかけた

靴ひもを縛っていたらしく手を動かしながら顔をこちらに向けた


「なんすか?」


…敬語…


一応、幼なじみのはずなんだけどな…


「ん、そのね」


言うまでもない、私は光の敬語について言いにきたのだ!中々言えなかったから!


「?」


黙りこくる私に対して光が何だ?というように顔を傾げた

可愛い…



「わすれたんすか、言うこと。流石アホっすわ。用がないなら、行きますけど…」


中々言わない私に毒を吐きつつ立ち上がる



「あ、まって!敬語!」


「は?」


敬語、だけで何がわかるってゆーんだ
光の言う通り、アホか、自分


「いや、そのね?昔は、タメだったのに、敬語に…その…何で敬語になっちゃったかなあって。」


顔は最初光の方へ向いていたはずなのに喋っているうちに下へ向いてしまった


「…だって、貴子、先輩やないですか」


「や、でも、幼なじみだから良いじゃない…?」


恥ずかしいが、好きな人には敬語で話されたくない
幼なじみなら尚更だ



「一応、礼儀ですし…」


そう、言われると確かにそうだ
けど、嫌だ。我が儘だとは知ってる
けど、前までタメだったのに敬語になってる、というのも、悲しいものなのだ。

そう、伝えると、光がちょっと目を丸くした

「……貴子先輩…?」


「ほら、それも。先輩とか、いらない」


ふてくされる私
こ、子供すぎて泣きたい
けど、いいや、吹っ切れた



「……はぁ、なんやねん、もう」


光がため息をつき、髪をくしゃっとさせた


ヤバい、ご機嫌損ねたかも…

後悔しても遅い
言ってしまったのだから


次に返ってくる言葉にビクつきながら下を向く

しかし、返ってきた返事は意外なものだった

「あー、もう。ええわ。もうどうとでもなれ。あんな、俺が貴子を好きやからや。」



「え…?」

顔を上げた
すると赤かった
あ、いや、真っ赤だった

光の顔が


「それってどういう…」


「それも聞くんか、はぁ、あんな、お前のことが好きやねん、けど、幼なじみのレッテル貼られとるし」

「うん」

「好きって言われても貴子が迷惑だと思ってずっと抑えてたんやで」


「…ぇ?」


「いやだから」

何度も、え?なんて聞き返す私に再び説明しようとする光


「あ、ちがくて、好きって、本当?」

私が気になるのは、それ


「…好きや。」


「…」



「なんや、ここまで聞いて、嫌いは聞かへんで」

そう、ちょっと睨まれる


「ううん、私も好き…」



「……っ!?」



私は彼にキスをした




敬語の理由は照れ隠しだったよう。



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