小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ ケンカとユウジと記念日

「何やねん!!アホ!人の気知らんと…っ。お前なんて嫌いや!!」



「!?…っ。いいよ!!浮気ユウジなんて知らない!!」


「んな!?うわ…き…て…っ。そりゃこっちのセリフや!!」


「「ふん!!」」



暑い真夏。
優しくそよぐ風
二人の影はそれぞれ離れた

ーーーーーーーー……



「で、暴食、」


そう、あきれた顔をしながら、佳那は私を見た

佳那の目の先にはケーキを食べる私
本日、というか、30分で6切れ食べてる

「そう!!」

私はむしゃくしゃしてるのだ
ユウジのせいで!!

「…はぁ、で、何があったの」

そう佳那が手を組んで顎を載せる

「…それが…」


今日…いや、あれは五日前あたりからだ。
ユウジがこそこそし始めたのは。

ーーーーーーーーーーーーーーーー……


「ユウジー?」

私は教室でなにやら作業をしているらしいユウジに声をかけた
部活を誘うために

そしたら、ガタン!とビクついて慌てた様子で、何かを机に隠した

「な、なんや?」

そうどもるユウジが可愛くてちょっとからかった

「あー、今の何ー?不要物かー!」
なんて、机に手を入れようとすると、手を払われた

「見るんやない」

「え?」

真顔でそう言われたら何も言えない

固まっていると、ふっ、と目を逸らし部活、行こか。と鞄を持つ。

私はどこか違和感を感じた


それからだ、何かとそわそわしていたのは


そこまではいい
そこまでは


極めつけはこれだった

今日の放課後。
つまり、喧嘩して暴食する二時間前。

「お、ええ感じやん。」

「ん、出来た」

え?

ユウジを探してたら教室にいなくて、クラスの人に聞いたら、調理室だって聞いたから来ると、女と人と、ユウジの声が聞こえた


「好き…ん」

「…好きや」


…は?


好き?というか、今、キス、するときに出るような声、女の子から聞こえなかった?
ぇ?え?ちょ、は??


……浮気


そんな言葉が浮かんで結局そこに足を踏み入れる勇気はなく、走り去ってしまった


そのあと、なんか、教室にきてぎゃーってさわいで怒って私は先に帰ってきた
佳那をひきつれて
ーーーーーーーー……


「…まぁ、こんな感じ」


私は佳那にため息をつきながら言った

すると、佳那はへぇ、なんて言って視線を外へ向けた

まだ、外は明るい
流石、夏。
とっくに、五時なのに

そんなことを思っていると、佳那がゆっくり口を動かした

「ね、喧嘩して来たんだよね?」

「?うん。」

いきなり、なんだろう

「誰か走ってくるけど」

と、顎のしたに組む指を解いて外を指した


「…え、ユウジ?」


ユウジだった


息を切らしてお店の中に入ってくる



「ちょ、おま、何食うてるん、死なすど!」


「はい?え、ちょ…」

そういいながら、お金を机に置き、私の腕を持ち立たせようとする

反抗するが、佳那が行きなさいって言い放つから、立った。 
怖かったから

手を繋がれて、そのままお店を出る

「ちょ、どこにいく、の?」

「学校」


「は?」

私はユウジの手を払った


「浮気しておいて何、いきなり。」


するとユウジが言う


「あんな、自分今日何月何日か知っとる?」


「え…馬鹿にしてるの?今日は……は…あれ?」


私は違和感を覚えた
そして思い出す、今日という日を。
ユウジが思い出したと、察したのか顔を逸らして言った

「今日、記念日なんやで?」


「…私達が付き合い始めて…」


「せや…」


そう考えそして、ハッとユウジを見た


「まさかさ、こそこそしてたの、何かサプライズしようとしてた?」

「…せや」

「女の子は?」

「ケーキ作り、手伝ってもろうてた」


「………」



私は思い切り、ユウジにだきついた


「ユウジ、ごめん、」


「ほんまやで、お陰でサプライズも何もなくなってもーたわ」


はぁ、とため息をついて手を回してくれた

「大丈夫!まだ、何も見てないし!」

「そか?」

「うん!」



私は思い切り頷いた








すれ違いは、勘違い
勘違いはすれ違い


気をつけて、ね?



おまけ。

「一氏君、本当に彼女さんのこと、好きなんやね?」

「ん、一番好きや。」

「羨ましいなあ、」


終わり*

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