小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 壁ドン

「ねね、ユウジー」

「何やねん」


「壁ドンしてー」


「………」


「………」


「は?」


私の突然のカミングアウトに一つ間をあけて怪訝そうな顔をして見てきた

場所は資料室
時は放課後
当番でここに来ている

「や、だから壁ドン…」

「なんでお前に壁ドンなんてせなあかんねん」

彼は私の幼なじみであり、よき理解者…だと思う
そう願おう
めっちゃ怪訝そうな顔してるけど


「というか、お前財前の彼女やろ。あかんやろ。どアホ。んなの、財前にやってもらえばええやん」


「いやいや。無理無理。私が今しようとしていることは、アホなことであって決して光にはやらせられないのだ」

「俺ならいいんかい」

「うん」

「滅びろ」

「えー。ユウジが」

「あそ。じゃ。」

「ごめん!ごめんて!」

言い合ってて私が墓穴掘ってユウジがしめたと、帰ろうとするところを止める


「おーねーがーい!本当、ネタ系なの!」

「…しゃぁないなぁ。なんやねん」


私はパァ、と笑い
説明した

「や、なんかさ。漫画とか、小説とかさ、よく壁ドンあるでしょ?」

私達は一応床に座る

「おん…。まぁ、少女漫画とかな。」

「ぇ、何で知ってるの」

「小春が読んどるから見た」

「小春ちゃん、流石!!」


私はグッジョブ!!話が早い!

「で、壁ドンするときって大体綺麗に書かれてるじゃない?」

「そりゃな」

「二次元だといけるが、三次元はどうなのだろうと思って。やりたいの」

「しょーもな」

「だから光にやってもらえないの!」

私は必死で訴えた

「そりゃ言ったら即別れるわな」

「うわぁぁ。だから!ね!」


「それやってどうすんねん」

「四天ニューズに連載を頼まれてるのは知ってるでしょ?」

私は資料室の四天ニューズコーナーへ行き、棚から新聞を取り出す
ここでは四天ニューズが納められている

「ほらこれ」

「知っとるで。毎日隣の家のお前の部屋が毎晩毎晩夜中までついとる原因やろ」


「そうそう。でたまに、寝てるユウジを起こすのが楽しいんだよね」

「は?」

「ぁ、やべ…」

「今何つったコラ…「それで、今主人公が男の子といて、壁ドンされるの!で、知識無いのに書くの嫌だなぁって。お願い!!」


「……はぁ…」

ユウジは一つため息を零した


…ドンッ


「…」

「貴子…」

えー…なんか、喧嘩してるみたい……

私は口を開いた

「ねぇ、これさわた…」

バサッ

「!?!?」

突然ドア付近で何か落ちる音がした
誰か来たのだろうか
困る
誰だ


「…ぇ。ひか…」


光だった


彼は目を見開いていたのをキリリ、と釣り上げこちらへズンズン歩いてきた


あぁ、教材踏んでるよ、光…怒られるよ…


「ぇ、おうわ!!」

そんなことを考えていたら、腕を捕まれた

「すみませんけど、一氏ユウジ先輩、連れて行きますわ」

「…駄目やと言ったら?」

そういってポスン、と私を光から奪って胸に収めた

え、ちょ、え。は、
何が怒ってるんだ、え

私はパニクりつつ、必死に状況を理解してた


「んなの、通る筈ないでしょ、貴子は俺のもんなんですから」

「………っ。ひか、」

「ほな、ほら。」

ユウジは少し笑って私の背中を押した

「ふん。」

光は私の手を再び掴み、スタスタと歩く

どれくらい、経ったのだろうか


「…」
「…」

「いた、い」

私は手首の痛みをこらえていたが、大分歩いて我慢できずに声を出した


ドン…ッ

「っつ…!!」


痛かった。

「なんなん、貴子」

「え?」

「なんなん。ほんまなんなん。彼氏は誰や?」

「ひ、ひかる…」

怖い顔だった

「せやな?なのに、何でユウジ先輩に壁に追いつめられて、あんなんなっとるん!?二人きりで!!」

顔の斜め上にある光の拳がギリ、と握られた

「ごめん、」

「許しませんよ」

そういうと、キスしてきた


「んっ!!!!」

「は、」

「ふ、ん、はっっ」

何度も。
やっと唇が離れて、息を吸う
苦しい


「ほんま、何で…っっ。浮気なんて…。」

「ちが…っっ…ん!!!」

訳を話そうとしたら、唇で塞がれる


「黙っとれ」

「いや、言わせてもらう!」

「あ?」

「私がユウジに壁ドンされてたのは、私が頼んだからだよ」

「は?ふざけてますね」

「聞いて」

「…」

「私、四天ニューズに連載してるでしょ、小説。それで、恋愛モノだからやっぱり壁ドン要素欲しくて。で、次号、主人公が男の子に壁ドンされるんだけど…。それを書くにあたってどんな感じか知りたかったの。」


「だからって何で…」

「光に頼んだら、呆れられそうだったから…。ユウジに頼んだ…」


私がぽしょ、と最後下を向いて呟くと
ハァ、とため息が聞こえた
ため息を聞くのは今日何度目だろう


「アホやん。」

「ほらー…」

「あんな、呆れても、他の男に好きな女を壁ドンさせたくないですわ。それくらいわからんのですか。アホですね。嫉妬した俺がバカみたいやないです。まぁ、でも。小春先輩が好きなユウジ先輩がそんな気持ちあるはずないですわ…」

光が一気に話す

「そうだよ…。第一、幼なじみだし…」

「それが怖いんですよ」

「そ?」

「おん」


私はうーん、と顎に手をやった
 
光は壁ドン体勢から、普通に戻りしゃがみ込んだ
 

「で?何かわかったんですか」

「んー、うん」

私もしゃがみ込む

「壁ドンなんて、綺麗に二次元で書かれてるだけかと思ってたんだけどね?」

「おん」

「ユウジにされたら、なんか、喧嘩してるみたいだった。」


「お、おん。」

「でもね、光にされたら、全然違ったよ。痛いし、怖いし、でもそのあとが愛しかった」


「貴子…」

「ふふ、ごめんね、間際らしいことになって」
 
私達は立ち上がった

「ほんまですわ…善哉、おごってくださいよ」

ちょっと微笑んで私に手を差し出す

「はーい」

私はそれを掴んだ






another*

「ったく、なんやねん。片づけは俺かいな」

「あれ?なんや。何やっとるん?」

「ぁ、謙也。それがなぁ…カクカクシカジカ」

「お、おお…。それは何とも…大変な…」

「ほんまやで。ぁ。ここで合ったのも何かの縁。手伝ってや」

「ぇ。」








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