小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 昔みたいに

「貴子〜。」

「んー?」

クラスメイトに呼ばれた私は振り返る


「なぁ、最近全く謙也と話さんようになったけど、どないしたん?」

またか、

私はうんざりした

これを聞かれるのは、何度目だろう
もう一ヶ月も経つのに


「彼女出来たから」

…謙也に彼女が出来たから

「は?そんなんで話さなくなったん?」

「そう」

「アイツも薄情やなー」

クラスメイトは謙也を罵る

「ううん。私が避けてるの」

「は?」

意外な言葉に彼は驚いたらしく目を丸くした

「彼女の気持ちになってみるとさ、ほら、ほかの女の子と楽しそうに話してるところなんて見たら不安になっちゃうと思うから」

「ほーん?」

「うん」

「親友やったのに…寂しいこっちゃな」

「まぁ、ね」

そう、彼は去った


「寂しい、か」

その場にもやもやと共に残された私はただただ呟いた

「好き、だったのになぬかされちゃった」

人の賑わいをなくした教室は寒くてスカートの私は震えた

「座ろ、」

私は私の席まで歩きそこに立つ、がその更に前に行きそこの椅子に座った

「……冷た…っ」

教室の椅子は冷たくて
太股にから伝わる温度は心も冷たくする気がした

“忍足謙也”その人物の机に突っ伏す


「けん、や…」

聞こえるか聞こえないかの声と涙で呟くのは、もう掴めない、愛しい人の名



「……ずっと好き、でした」

 

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