小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 頑張れと言いたくて

「貴子先輩」

その声はすんなりと私の中に入ってきた

「うん?」

「阿保ですね」

この言葉以外は


「ぇ、酷くない!?何で!?!?」

「阿保やから阿保って言ったんですけど、何か問題でも?」

「ありありです」

「このノート、ペケだらけやないですか」

そう、私は今受験勉強真っ盛りなのである
今日こそはと苦手な教科である数学を得意にすべく、図書館で必死にやっている
が、ものの見事にペケのお祭りなのである

「うるさいなー」

「さいですか」

「ええ…」

「え?」

「何そのからかってたけど飽きたからいいや、的なその反応…え、つら、ぇ何それつら」

「勉強したらどうですか」

「はい」



この子は最近何かと勉強しているところに現れてはこう、毒舌をかましていくのである


____________………



「白石〜」

「な、なんや…」

私は昨日の財前の愚痴を吐くべく、わざわざ8組から2組までやってきた
相変わらず遠い
でもそれでも愚痴るために頑張ってきた

「あのさー」

「おん」

「財前が…」


私は昨日の出来事を話した
すると白石は、あー…と視線を宙に浮かせた

「それはな、貴子、財前は…「ぁ、先輩達やないですか」

「おおう」

突然の財前の声にびっくりした

「ほんま、可愛くない声出しますね、先輩」

「うるさいやい」

とりあえず毒舌に反抗してやる
第一、私、先輩だし!おかしいから!


「財前やないか」
「どうも。でわ」
「ぇ、もういくんだ」
「行って欲しくないんですか?」

にやりと財前が笑った

「ううん」
突っ込みを期待して即答

「…貴子……」
「……」

何故か突っ込んでくれなかった


_______……………


「……」

放課後の図書館
1人窓際でカリカリとシャーペンを動かしている
今日も受験勉強だ
今日は数学
結構手強い

「中心角の2分の1だから…」

とくに図形は。

「あ、貴子先輩。今日もおるんですか」

「おるんです」

私は手をびしっと、あげた
何故あげた、自分

私はそろそろ、と手を降ろして、また問題集に向かった
視界の隅では財前がカウンターに入って座るところだった
多分暇だと言って、携帯をいじるか、iPadを取り出す

「…よし」
私はそう、自分に言い聞かせるように呟き、解答を開いた


シャ…ッ
シャ…ッ
…シャッ

 
「ぁ、72点。」

中々いい出来だった

「……よくできてますやん。」

財前が話しかけてきた
どうやら携帯をいじっていたみたいだ

「ふふ、うん。数学、先生に質問しまくったからね」

「さいですか…」

「うん」


私は足下にある鞄から教科書を取り出そうと屈んだ

すると財前がカウンターから出たのか
カタン、と音が響いた
私は体を起こした

「ほな…」

「ぁ、帰るの?」

「借りに来る人いなささそうなんで」

「そっか、またね」

私は小さく笑った


「おん…」

そして…


ポン

「わ、」

「受験、頑張って、ください」

「ぁ…うん」


そんな言葉とお菓子の入ったかみ袋を残して去った



ー それはな、貴子、財前は…
”頑張れ“って言いたいのに言えへんっちゅー、ツンデレなんやで ー






ー頑張れと言いたくてー






___________………


あり様、キリ番ゲットありがとうございます
リクエストは
財前が受験生を励ます
ちゃんと出来ていますでしょうか…
不安…
お気に召していただければ幸いです
ありがとうございました

読んだら、感想くれたら嬉しいです

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