小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 遠回しの言葉

「好きです」

「…考えさせてもらえへん?」

「はいっ」


そんな告白の一部を聞いたのが、私



「(最悪。)」




ー遠回しの言葉ー


「なぁ、貴子」

「ん?」

あんな告白の一部を聞いた次の日、私とその告白されていた相手。忍足謙也と図書館へきていた
この、忍足謙也なる者は、私の友であり、私の密かな想い人なのである

「告白、された」

「ふーん?」

知ってるけど、知らないふり

「どないしたらええと思う?」

「何が?」

「受けるか、受けないか」

「それ、私に聞いていいものなの?」

「…おん。多分」

「多分なんだ」


私はカリカリと進めていた手を置いた
カタン、と机とシャーペンのぶつかる音が響く


「…受けてもいいんじゃない?謙也がいいならだけどね?」

…本当は受けてほしくないけど
謙也はヘタレだから、こういうの、踏み出さない


「…せやなあ」

憂鬱そうに、椅子に背をもたらせた


「何?何か、心にひっかかるものでもあるの?」

「んー…」

曖昧な返事をしてくる
…はっきり言いなさい、謙也…
私ははぁ、とため息をついた

また、カリカリと音が響く
しばらく………
どれくらいだろうか
五分、いやもっと経っただろうか
ずっとお互い、自分の世界に入っていた
私は勉強、謙也は医学の本なんかを読んで…ないだろう、ページをめくる音がしないあたり。

「なぁ、貴子」

「?今度は、どうした」

「俺な、」

「うん。」

「好きな人がおんねん」

「…へぇ、」

反応が遅れた
軽く動揺した
それに気づかれていないか、チラリと謙也を見る
しかし、医学の本を見ているからきっと気づいていない

「でもな?その人、近いようで、近くないねん」

「そう」

私と同じだ
私も謙也が近いようで近くない

「俺、好きって言えへん」

「どうして?」

「向こうが、俺のこと何とも思ってないんや。」

「聞いたの?」

「聞いてない」

「聞いてから言いなさいな」

私ははぁ、とため息をついた

「(謙也、好きな人いたんだ)」
私は微妙な気持ちで更にシャーペンを走らせる

削れる、削れる
シャーペンの芯

ガッ

「ぁ。」
「貴子」

勢いよく折れた

「今度はどうしたの」

カチカチ、とシャーシンを出してまたノートに向かう

「あんな、俺受けへんわ」

「?」

「だから、告白」

ガッ
 
「…ぁ。」

また、折れた
殺気を覚えながらもカチカチ、と再びシャーシンを出す

「どうして?」


「貴子が好きだからや」

「へぇ」

…………
 

バキッ


「は、」

芯がまた、折れた
何故なら、紙に芯を立てる途中いきなりカミングアウトしてくるから驚いて勢いが余ったから


「…だから、貴子が好きって言っとんねん」

「や、だから、は?」

頭がついていかない
なんだ、これ

「……やっぱり向こう、断る。正々堂々とお前に言うわ」

「え、ぁ」

「けど、向こうを断ってから、改めていうからな。覚悟しておけっちゅー話やで」

彼は、医学の本からやっと顔を上げた

目があって顔が熱くなるもんだから
芯を出すのも忘れてノートにガリガリと向かっていた



ノートに穴が開いた



「(帰りたい。恥ずかしい。芯ケースに芯無い。)」



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勢いで書いた
もう、知らん
文才がない





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