小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ 雨の日

「あちゃー、雨…」

私はトントン、とつま先を床に軽く打ちつけた

外ではザァザァ雨だ


「傘…」

私はうなだれた
あぁ、今朝天気予報を見て「ぁ、雨かぁ」って、バッチリ見たのに、結局家を出る頃には忘れてた…

ただの、アホ。
アホの村に入る試験絶対受かるよね、私
無いけど


「貴子さん」

「?ぁ。財前君。」


ふと、声をかけてきたのは、財前君だった


「どうしたの?」


私が問いかけると、ちらり、と手を見て言った


「傘、忘れたんでしょ。」


「あはは、うん」

ズバリと言い当てられてしまった
私は苦笑する
流石に、何故かは、言えないけど



「……よかったら、」

「え?」

「一緒に帰りますか?入れてあげますよ」

顔を逸らしながら言う財前君

「……っ。う、ん。その、よろしくお願い、します…」

「おん…」


バサ、と音をさせて傘を開く財前君
私はそれをちょっと後ろで見てた


雨の日、傘を忘れて、よかったかもしれない

prev / next

[ back to top ]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -