小説 四天宝寺 短編 | ナノ


▼ Kiss

「謙ちゃん、キス、したい…」

「はっ?」


二人しかいない教室で謙也の声がやけに響いた
放課後、私達は日誌を書いている

「貴子、何ゆうてるん?」

「だからキス…」

「アホか。んなのできるか!」

と、顔を赤くする謙也


「……わかった、」


私は謙也から日誌に目を移した


何故、私がこんなことを言っているか
それは、明らか、私の友である佳那のせいである

[アンタ、キス中々されないとか…あきられてるんじゃない?]

この言葉が原因である

告白されて私も好きでOKした
けど、想像とちがくて、つまらないって思って、あきたのかな…

そんなことまで考え始める私はとても惨めだった

はぁ、と前からため息が聞こえる
私はびくん、と肩を震わせる


「新保がゆうてたの、ちゃうで」

「え…っ」

私が驚いて顔を上げる

「あいつ、帰り際に”貴子にキスしないって…飽きたの?アホ抜かしてんじゃねーぞ“とかゆうてきてな…だから即答してやったわ」

”んなわけあるか“ってな


ガタン、と椅子が床に擦れる音が耳に届いたと同時に私の唇は塞がれた

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