「ゆっきー!!」 佳那は、幸村に声をかけた 丁度幸村は部活が終わり、帰りの用意を していた
佳那と幸村は幼なじみで、仲が良い 周りの人たちは、彼らが付き合っている と勘違いをしているほど
しかし、そんな関係ではなかった
「ゆっきー、帰ろー」 「ちょっと待っててねー」
佳那は、部室の壁に寄りかかり、幸村を 見た
佳那は、気づいていないが、幸村もまた 佳那を見ていた
お互い、黙っていることがあった
それは、とてもとても辛いこと
お互いそれに気づいていない
自分の立場に押しつぶされそうで……
怖い、それが怖いーー……
幸村side*
佳那に話していない
病気のことを 余命のことを
「大変言いにくいのですが、残念ながら 、幸村さんの余命一年となります」
あの、頭に響いてくるドラマのような言 葉
それは俺に重くのしかかった
真田には、言った
真田は、あのポーカーフェイスのまま「 そうか」と言ってそのまま
あれはあれで受け入れてくれたんだと思 う
けど、佳那は、どういうだろうか どんな顔をするだろうか 離れていってしまうだろうか
親よりも、誰よりも一緒にいた佳那。
俺の好きな佳那
だからこそ、言えない
大事だから、愛おしいから、悲しそうな 顔をさせたくない
ーー…俺はズルいのかもしれない
佳那side*
いつか言わなきゃだよね… 私はゆっきーに言っていないことがある
それは私の余命のこと
私は病気だった
薬とか色々試して治したはずだった
けれど…
「肺に転移しましたもって、一年です」
その時、目の前が真っ白になった 医師の言っていることがわからなくなっ た 信じたくなかった
けれど、“余命一年”その言葉は私に重く のしかかり、現実なんだとそう、思い知 らされた
そのことを、ゆっきーに言わなければい けない でも、言うのが怖い……そして、辛い
好きだから 大事だから
でも、言わないでそのまま私が死んだと して 自意識過剰だと思うけど、それでテニス に影響したら、困る
言ったほうがいいのか……
けれど、怖い
結局知るときが来るのにーー…
ーーーー………
幸村or佳那side*
それが言い出せないかわりに この気持 ちを伝えよう
この命が尽きる前に
(私は)(俺は)
(貴方に)(君に)
((告白をしよう))
夕日が綺麗な今日の路地二つの影が向かい合った