▽そんなきみが好きなんて、
突然で申し訳ないけれど、あたしには好きな人がいる。同じクラスでバレー部の男の子、加藤くん。
加藤くんは普段は(言い方は悪いが)バカみたいなことばっかりしてて、いきなり休み時間に熱唱し出したりとイマイチわからない。
今もあたしの視線の先では、彼は他の男の子とトランプで盛り上がっている。その姿は色恋沙汰にはまるで興味ありませんってカンジ。
と、そんなバカみたいな加藤くんだけど、授業中は見違えるほどかっこいいのだ。授業だけ眼鏡をかけているけど、似合っているからいつもかけてほしい。
さっきまでの緩んだ顔はどこへやら、真剣に黒板を見つめる横顔がすごくいい。かっこいい。
くそ、あなたのせいで授業に集中出来ないんだからな!
そんな勝手な理由で恨めしげにあたしが加藤くんを見ていると、友達の理乃がこちらに教科書片手に歩いて来た。
「早智ぃ、何見てんのー?」
「んー?時間割」
うまいこと傍にあった時間割に目をやり、あたしは答えた。次数学だっけと背伸びをしつつ、ああと思った。
そんなきみが好きなんて、
(――誰にも言えないだろうな)