▽ガラスケースの花嫁
僕には、それはそれは綺麗な花嫁がいる。僕の花嫁は絶対に歳をとらない。そして絶対に喋らないし目を開けない。
え?花嫁は死んでいるだろって?はは、何をばかなことを、僕の花嫁はちゃんと生きている。ただ、ちょっとほかの人より長く寝ているだけさ。
「ねえアリサ、きみは生きているだろう?」
アリサ、とは僕の花嫁の名前だ。彼女は何も言わない。もし仮に声を発してくれたとしても、僕には届かないだろう。
アリサは目を閉じたまま、ぴしりと背筋を伸ばして立っている。その目のフチを飾っている長い睫毛が、肌に影を落としていた。
「アリサ、愛しているよ」
僕はアリサにそっと口付けた。ひんやりとして冷たくて、それがまたとても心地よかった。
かわいいよアリサ、すごく。
僕の唇のあとが嫌になるほど付着しているけど、それも愛の証だと思うと気にならない。唾液が僕の唇から伸びてぷつりと切れる。
「アリサ…もういいだろう?僕の子供を孕んでくれないか、」
僕は興奮して息を荒くさせながらガラスケースの鍵を開けた。
返事はやはり、無い。
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シュガーレス様