大切なのは





ふと 自然に目が覚め ゆっくりと上体を起こす
時計を見れば ちょうど6時になるところだった
久しぶりにアラーム機能に頼らず 起きれた事に気分が良くなり
んーっと伸びをして隣に目をやれば いつもいるはずの樹がいない
トイレだろうか? ……それにしてはシーツが冷たい
目覚まし機能をオフにしてから 寝室を出ると
微かに香る良い匂いに きっと何か作っているのだろうと考える
火を使ってないか不安になり 名前を呼びながらキッチンを覗けば
慌てた様子で 作っていた物に覆い被さり隠していた
よしよし 見た所火は使ってなさそうで安心していると
こちらを睨みつけては 見たかどうか訊いてくる樹に
見ていないと正直に返せば ホッと息を吐かれる
そしたら あっちにいってだの見ちゃだめとか言うものだから
後ろを向けば そのまま移動してリビングの椅子に座れと指示される
椅子を引いて 大人しくキッチンを背に向けて座っていると
振り向かないよう念を押され 手で目隠しすることになった

「絶対に 見ちゃだめだよ!」

「わかった わかった……ところで何作ってるんだ?」

「ひみつー」

教えてくれない樹に 朝ご飯かと尋ねれば違うらしい
何回かレンジの音がして 10分程そのままの状態で待っていると
どうやら完成したらしく できたと喜んでいる声が聞こえる

「樹ー もういいか?」

「うん あ……待って アレ忘れた!」

……アレって何だ
ガタガタと引き出しの開閉される音を聞きながら
早く見たい気持ちを抑えて 辛抱強く待つ
足音が近づいてき テーブルに置いたのがわかった
もういいよと言われ目隠しを解いて見ると 筒型の箱があった

「樹……これって…」

「パパのお昼ごはんだよ」

……まさか お弁当を作ってくれるとは思ってもいなかった
信じられずに 容器を持ち上げまじまじと見つめる
中身を確認しようと蓋に手をやると 素早く止められ
お弁当は 食べるときに見るものだから
お昼になるまで見てはいけないと言われてしまい
それなら朝ご飯にして 今から食べる事にすると提案したら怒られた
せっかくだから 樹の目の前で食べて感想を伝えたいのに
そろ〜っと手を伸ばせば すぐさまぺしんと叩かれる

「ダメっ お昼までがまんするの!」

「わかった 我慢する」

……我慢なんてするもんか 後でこっそり見てやる
そんな俺の考えがバレたのか 見たら絶交すると言われ
無理矢理 指切りさせられた……俺の事をよく理解してるなぁ
スッと差し出された紺色の布に 首を傾げる

「……お弁当 包めないから教えて」

恥ずかしそうに言う樹に 頬が緩んでいく
俺に任せたりしないで 自分でやろうとする姿勢は素晴らしい事だ
包み方を丁寧に教えてやれば リボン結びに苦戦するものの
何回か繰り返す内に あっという間に覚えて出来るようになり
偉い偉いと褒めてやると 嬉しそうに照れている
さて ご飯にしようかと立ち上がれば
樹が キッチンに残したままの残骸を片付けるのに走った


「指切りしたんだからね?」

「あぁ わかってるよ」

未だに 中身を見ないか疑われているのに対して
俺はそんなに信用してもらえないのかと思う
まぁ……前科があるから 仕方ないのだろうけど
樹と隠れんぼや物を隠す遊びをしている時に 途中で見てしまい
怒った時の反応が可愛いから つい何度もやってしまったのだ
もう一度 念入りに指切りをして約束すると
お仕事頑張ってねと笑顔で見送ってくれる樹に手を振り
しっかり戸締りするように言えば はーいと返事をしてドアを閉める
施錠したのを確認し 数歩進んだ所でドアの開く音がした
樹が隙間から ひょこりと顔を覗かせている
どうしたのかと思い 俺が声をかけようとするよりも先に樹が話した

「お弁当 ちゃんと食べてあげてね」

にっこりと笑い それだけ言うと再びドアを閉めた
……もちろん ちゃんと食べるに決まっているのだが
樹の言葉に 何だか引っかかりを覚え 復唱する
ちゃんと食べてあげてね……か

「まさか……変な物を入れたんじゃないだろうな」

つい先程まで 楽しみだった筈のお弁当が
樹の意味深な発言の所為で ガラリと変わった
昨日の今日だから また何か悪戯目的で始めたのかもしれない
ワサビか もしくはカラシか……チリソースとかだったら嫌だと
家に何の調味料があったかを思い出しながら ポアロまで向かった


ーーーーーーーーーー


昨日に比べ 格段に回復した客の入りに梓さんは大層喜んでいた
どうやら例のカフェは 接客態度が相当酷いらしく
戻ってきた客達が 時々話題に出してくるのだ
一斉に他所に行った常連客に対して 梓さんは少しむくれていたが
マスターは全く気にしておらず
寧ろ戻ってきてくれてよかったと 呑気に笑っていた
俺は他店に靡いたお客様の事なんて気にしないので
今日も愛想よーく笑顔を振りまく
ちらりと 壁掛け時計に目をやれば午後2時を過ぎた所だった
テーブルを片している最中 玄関ベルが鳴り
見知った人物が来店したので 駆けつける

「いらっしゃいませ! こんにちは 毛利先生
  蘭さんとコナンくんも 今からお昼ですか?」

「あぁ ちょっと依頼が長引いちまってな」

「ご依頼があったんですか?
  なら弟子の僕にも 声を掛けてくださってよかったのに」

少し肩を落として言えば 悪いなと謝られる
まぁ 実際は依頼人が事務所に入るのを目撃していたし
毛利先生達が依頼で出掛けたのも確認済みだ
ついて行こうと思えば行けたが 昨日は遅刻した手前
そう毎度 店を飛び出すのも悪いので今回は諦めたのだった
テーブル席へと案内し お冷を持って行くと すでに決めていたらしく
ナポリタン2つと ホットサンドを1つ注文された
腹が減ったと呟いてる毛利先生に 急いで作りますねと声をかけ
梓さんにも手伝ってもらい 料理を仕上げていく
出来上がった料理を持っていけば 待ってましたと言わんばかりに
みんな揃って 手を合わせて食べ始めた
美味しそうに食べるのを見ていると こっちまでお腹が空いてくる

「ん〜 やっぱりポアロの料理は
  ナポリタンが1番美味しい! ねー コナンくん」

「うん!」

「何言ってんだ サンドイッチに決まってんだろ」

ただのバイトの身とは言え
自身が働いている お店の料理を褒められれば嬉しくもなる
キッチンに戻り それぞれよく飲んでいると思われる
飲み物を入れては テーブルまで運んだ

「どうぞ 僕からのサービスです」

「あ…そう言えば 頼むの忘れてた」

「悪いな安室くん」

気にしないでくださいと微笑むと 2人にお礼を言われ
コナン君にもどうぞ とオレンジジュースを置いた

「ありがとう 安室さん!」

元気よくお礼言うコナンくんに どういたしましてと言い
普段樹にしてるように頭を撫でてしまった

「……おっと ごめんよ つい」

「ううん 別にいいよ」

この間もそうだが コナンくんを見ていると つい
樹と同じように接してしまう
自分が思ってる以上に 子どもが好きなのだろうか…それとも
樹に会えないのを コナン君で補っているのかもしれない
もしそうだとしたら コナン君には悪い気がする
早く帰りたいけれど 公安の仕事で今日は遅くになり
帰る頃には 樹は寝てるだろうから声も聞けない
風見にでも押し付けて帰るか………いや やめておこう
悶々と考えて時間を確認していたら 毛利先生が僕を呼んだ

「何でしょう?」

「……何でしょうじゃねえよ
  そろそろやめてやらねぇと ボウズの頭がもげるぞ」

「え……あっ!ごめんよ コナン君」

先生に言われてコナン君を見れば 僕は無意識に撫でていたらしく
髪の毛がぐしゃぐしゃになっているのを 慌てて整えた
コナンくんは 少し顔を引き攣らせていたが
全然大丈夫だと言ってくれる……良い子だ
お詫びにプリン・ア・ラモードをサービスすることにして
せっかくだから お二人も何かどうですかと聞けば
毛利先生がデザートをリクエストしようとして蘭さんに咎められる
僕持ちなのだから別に構わないのにと言えば
既に飲み物を頂いてるので と申し訳なさそうに断られた
暫くして梓さんに休憩に入るよう言われ その間営業を
お願いしますとバックルームに下がる ついにこの時が来たか……
ロッカーから取り出したお弁当を手にし 静かに眺める
すると フロアの方から騒ぎ声がしたので何事かと思い部屋を出た

「安室さんっ 助けてくださーい!」

火事! 火事になる! と慌てている梓さんの側に行き
火が立ち昇るコンロに向かって 思い切り息を吹きかけた
一瞬で消えた火に おぉ〜と歓声が上がり 梓さんにお礼を言われる

「助かりました……急に火が大きくなっちゃって」

「今朝 コンロの調子が悪かったと
  マスターが仰っていましたから そのせいかと」

僕が使っていた時は何ともなかったので…伝え忘れていた事を謝り
今日はこのコンロを使わないようにしてもらい
一応火傷をしていないか確認し バックルームに戻るとする

「あれ? 安室さん お弁当箱変えたんですか?」

いつもは長方形のなのにとカウンターを指す梓さん
どうやら持ったまま出て来てしまい そのまま置いたらしい

「あぁ…幾つか持っている内の1つです
  容器が違うと作るのも楽しくなりますから
  と言っても 今日のは僕が作った訳じゃないんですけどね」

「もしかして! 彼女さんですか?」

「んなもん 彼女以外誰が作るってんだよ
  態々聞かなくてもわかるだろうが」

馬鹿かお前は と毛利先生に言われた蘭さんが
どうせ私は馬鹿ですよーと 舌をだして拗ねる
彼女だと勘違いされているのを 訂正しようとすれば
梓さんに どんなお弁当か見たいと言われ
蘭さんまで目を輝かせて 私も見たいです!とせがまれるのを
当たり障りのない言葉で断っておく

「そんな 見せられるような物でもないので…」

「おいおい…
  仮にも彼女が作った物を そんな風に言う奴があるかよ」

頬杖をついた毛利先生が ジト目で僕を睨み
俺が見てやるんだから さっさと持ってこいと手招きしてくる
だから……彼女ではないんですよ
第一 どうして毛利先生に見てもらわないといけないんですか
出かかった言葉を飲み込んで お弁当を抱えたまま 嫌ですと首を振る
そもそも普通のお弁当だったら 僕だってすんなり見せているのだ
あの子の意味深な台詞さえなかったら この場で開けてますと言えば
それまで 黙々と食事をしていたコナン君が
意味深な台詞ってなぁに? と訊いてきた

「ちゃんと食べてあげてねって言われたんだよ」

「……食べてね じゃなくて?」

「あぁ おかしいだろ? 変な物を入れられてないか
  不安でね…だから 見せたくないんだよ」


と言う訳なんです 毛利先生たちに話せばにやりと笑っており
コナン君だけは 呆れた表情で僕を見ていた
あぁ そうか……余計に見たくなるよなぁ…失敗した

「はは〜ん さてはお前 彼女と喧嘩したな?」

「…だから 違いますよ」

「それって 怒り弁当ってやつですよね!
  ゲテモノのおかずを入れて 彼氏を懲らしめるって この間
  テレビでやってました!……今度新一にも作ってあげようかなー」

「や やめた方がいいよ蘭姉ちゃん…」

「あ それ私も見た!
  ナマコとかクサヤが入ってて酷かったよねー」

絶対食べられないよね〜ときゃいきゃい騒ぐ女子に口元が引き攣る
何だその恐ろしいお弁当は……作る側も大変じゃないか
いや でも待てよ 樹が作っていた時には良い香りがしていたから
匂い系の物ではないことがわかる……そもそも樹は
ナマコとかクサヤを知らないのだから 入手できる訳がないのだ
やはりここは 単純に考えてワサビ辺りかもしれない

「んで? 弁当の中身は一体何なんだよ?」

こっちに来いと椅子を引いた毛利先生に促されて 渋々隣に座り
回避出来そうにない状況に観念して 包みを解いた
筒型の保温機能が付いている弁当箱に 両手を添えて息を吐く
皆がにやにやと見守る中 僕は蓋をそっと外し
中身を見た瞬間 すぐに閉めた
もう一度 蓋を少しだけ開けて中を覗き やっぱり閉めては
片手で口を抑えて俯く僕に 皆が何だ何だと訊いてくるので
崩れ落ちそうになる体を必死に立て直し 震える指で箱を差した

「…い……いたんです」

「いたって……まさか生き物!?」

「おいおい マジかよ」

生きたナマコじゃないかと騒ぎ立てる4人に説明してあげたいけれど
これ以上喋るのは限界だと顔を覆えば
大丈夫かと心配され 開けてもいいかと尋ねるコナン君へ
喋れない代わりに何度も頷けば 蓋がぱかりと外され
中身を目にした4人が え……と声を揃える

「これって………ひよこ?」

コナン君の言葉に とうとう我慢が出来なくなり吹き出す俺へ
ただのおにぎりじゃないかと 毛利先生が言った
弁当箱の中身は ひよこのおにぎりだったのだ
通称キャラ弁とも言われるそれに 期待して損したぜと
つまらなさそうに見ている毛利先生に 僕は笑いながら説明する

「ふははっ……よく見てくださいよ毛利先生! ひよこなのに
  ニワトリのトサカがついてるんですよ ひよこなのにっ!」

ひよこの頭の上には
スライスされた赤ウインナーが 3枚突き刺さっていた
しかも その大きさときたら凄い
本来なら筒の中には 容器が2つ入っているのだが
それは取り除かれており ラップとサニーレタスを敷いてある上に
どでかい おにぎりひよこが置かれている
箱の高さが約15センチだから ひよこは12センチ以上はあるとみた
ひよこなのかニワトリなのか……正直どっちかわからない
トサカがあるからニワトリ? しかし体の色は黄色いが
体の至る所に 白い箇所があるのは
成長途中の 毛が生え変わるひよこを表しているのか
ただ単に ふりかけを上手く混ぜることが出来なかっただけなのか
たぶん 後者だろう……まだ収まらない笑いと格闘していると
このままじゃ食べにくいですよねと
ラップを引っ張り おにぎりを持ち上げる蘭さんへ
お皿を持ってきた梓さんが ここに乗せたらどうかと話す
2人が慎重にひよこを取り出して移動させている途中
嘴がポロリと落ちるのを目撃し テーブルに突っ伏した
ダメだ………横っ腹が痛くて辛い

「こうやって見ると 中々可愛いかもしれない」

「そうですよね」

ひよこを眺めて クスクスと笑っている2人が
写真を撮ってもいいかと聞いてくるので 好きにさせてやる
俺もスマホのカメラを起動して ひよこを撮ろうとしたが
手元が震えてブレてしまい 中々綺麗に撮れずにいると
見兼ねたコナン君が 親切にも撮ってくれるそうなのでお願いする

「下のアングルからも頼むよ……ふふっ」

「…はーい」

ようやく笑いも収まり 深呼吸をして息を整えると
毛利先生に笑い過ぎだと 肘で突かれた

「しっかし こんなサイズのおにぎりなんて初めて見たぞ」

「しっ!…安室さんがまた笑うから 大きい声で言っちゃダメだよ」

小声で話している内容に 聞こえない振りをしてやり過ごす
僕としたことが……皆の前で大笑いするだなんて
素の自分を出し過ぎてしまった事に反省し 気を引き締めていると
毛利先生がお皿をゆっくり回転させて ひよこを眺めだした

「くっ……」

「ちょっと おじさん!」

「何だよ? 全体を見てただけだろ」

その動作が 僕の笑いのツボにハマることがわかっていないのか
コナン君に注意された毛利先生は 意味がわからないと首を傾げる
それで 味の方はどうなのかと訊いてくる先生へ
僕もそこが気になっていたのだと返す
どこから食べようか悩んで トサカの部分を食せば
米じゃないと味がわからないだろと怒られる

「すみません……あっ 見てください毛利先生!
  ひよこに戻りましたよ! あははっ」

「……面白くねぇよ」

お前って案外笑いのツボが浅いんだな 溜め息混じりに言うのに対し
そんなことないですよと返せば どこがだと呆れられる
お米を食べれば口に広がる味に 思わず笑ってしまう

「おっ……美味いのか?」

「いえ 不味いです」

「…なら もっと不味そうな顔で食えよ」

でも美味しいんですよ そう答えたら鼻で笑われた
自分でも矛盾してるとは思うが 本当に美味しく感じる
不味いのに美味しい 何故だろう………まさか

「……愛の調味料が入っているのでは?」

「んなもん 入ってねーよ」

「愛情が全体にコーティングされているから
  美味しく感じるんですよっ…きっと そうに違いない!」

「おい蘭…こいつに空手食らわしてやれ」

「嫌よ 空手はそんな事のために使うものじゃありません」

きっぱりと断る娘に 頻繁に使うやつが何言ってんだとぼやく
そんな毛利親子のやり取りを見ていると
梓さんが コナンくんのデザートを運んできては
体の部分しか残っていないひよこを見て 可愛かったのに残念と呟く
すると彼女が あっと声を上げたので全員が注目する

「私 わかったかも」

「わかったって 何がです?」

「意味深な台詞の意味ですよ」

梓さんがそう言えば 蘭さんも気づいたらしく
揃って頷き合う2人に 俺達はさっぱり理解出来ずにいた

「きっと ひよこを見た安室さんが
  食べられないかもしれないって考えて 言ったんだと思う」

「……食べられないとは?」

「えーと…キャラ弁は 大体が
  可愛いキャクターで作られているので その可愛さに
  食べるのが勿体無いって すぐに食べない人もいたりするんですよ」

「へぇ…そうなんですか」

「男女の違いってやつじゃねえか?
  男はそんなの気にしないで 普通に食べるだろ」

成る程 そう言う事だったのか……確かにひよこは可愛かったけど
食べるのが勿体無いとまで思わなかったな…
樹が初めて作ったお弁当なら どんな物でも完食する気でいたし
ひよこだったのは予想外過ぎて かなり笑ってしまったけど
あの大きさと作りは反則だろ……特にトサカが
まぁ 見た目や味よりも 大切なのは僕の為に作ってくれた事だし
一生懸命 お弁当を作っていた樹を思い出して微笑む
まぁ……思い出せるのは声だけなんだが

そんな中 毛利親子と梓は顔を寄せ合い ヒソヒソと話していた

「…ねぇ 安室さんの彼女って 歳幾つなんだろ?」

「あのデレデレ振りからすると
  歳下だな…しかも 一回り以上離れているのは確かだ」

「嘘っ…未成年なんですか!?」

「そりゃあそうだろ 大人じゃあんな弁当は
  まず作らねーよ 高校生か…考えたくはないが中学生だろ」

「「え…じゃあ安室さんって………」」

「あぁ 間違いなく ロリコンだな」

(……おいおい)

会話に混ざりたくないコナンは 黙々とデザートを食べて
何も聞いていない振りをした 樹の事で頭がいっぱいの安室に
3人の会話の内容は 全く耳に届いていない
自分がロリコンだと思われているのも知らずに
締まりのない表情で おにぎりひよこを食べていた

その後 おにぎりひよこのお腹の中から 重みに耐えきれなくなった
ミートボールが転がり出てくるのを 間近で見た安室は
腹筋が引き攣り 笑い過ぎて人生初の過呼吸を経験したのだった






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