食べ物とかじゃなくて。
エネルギーって。
あると思う。
『充電』
「シゲ。」
「んーー?」
「邪魔なんだが。」
「んーー。」
暖簾に腕押し、とは正にこの事だろう。
何を考えているのか、シゲと呼ばれた金髪の少年は、ノートパソコンを前にしている少年を後ろから羽交い絞めにしたまま、曖昧な返事ばかり。
少年の顔を伺おうにも、レポートしようにも、身動きが出来ない、何とも中途半端な状態。
一つ、溜息を吐いて、ノートパソコンを閉じる。
「顔を、見せてくれないか?」
ゆっくり、ゆっくり。
柔らかく、柔らかく。
言葉を紡ぐ。
呼応する様に体温が離れる。
揺れる薄い色素。
「何か、あったのか?」
一度、閉ざされる瞳。
「せや。」
開いて。
「何か、あった。」
「泣かないのか?」
再度、閉ざされる瞳。
「泣かへん。」
もう一度開かれた時、そこに煌く強い光。
「わかった。」
ゆっくりと伸ばされた腕が、黄金を抱え込み、引き寄せる。
−泣けへんのや−
少年の言葉は届いたのか、そうでないのか。
「気が済むまでこうしていれば良い。」
少年の言葉は柔らかく沁み込んだ。
「ありがと。」
エネルギーが切れるのはいつも突然。
自分でも驚くほど。
急かされる様に。
追い立てられる様に。
心に余裕が失くなる。
もうすぐ電池が切れるよ、と。
もうすぐ動けなくなるよ、と。
身体が。
心が。
一斉に警鐘を鳴らし出す。
そんな時は。
傍に居て。
そんな時こそ。
傍に居て。
ケータイの電池切れの様に。
エネルギー切れが起こらない様に。