確証の無いものを繋いだら

きっと何かが確定する


『数学的メランコリー』


取り留めの無い思考はいつもの事で髪の毛の跳ね具合と同じ様なものだと考えてしまえば何かが悔しくて、でも納得が行くものだから尚更腹立たしい。それでもアイツの髪は真っ直ぐだからアイツの思考は真っ直ぐなのかと考えると首を傾げたくなるが、いや案外真っ直ぐかと思い直して、湿気の多いこの時期は主張の激しい自分の末端に苛々しながら俺は何処から捻くれたんだ、誰だ生まれた時からなんざ正しい事を言ったのはと毒吐いてはまた取り留めの無い思考が巡る。落ちる雨音が何だか高いような低いような不思議な旋律でアイツの言葉を思い出し、黙って三味線を抱えて途切れる音を埋める様に小さく紡がれる言葉は短くても意思は強い。こんな雨の中傘を持たずに歩く俺は馬鹿なんだろうけど、水も滴るなんとやらとは思ってくれないのは確かで、でも呆れた様に深い眼は細まる瞬間が何より心を奪われる。奪われてる様で奪えれば良いのにとか思うと、それを見抜いた様に、「馬鹿か、風邪引いて死人なんざとんだ笑い種だ」と裏返した言葉にまた奪われて。いつか奪ってやりてェけど、多分色々貰ってるから七三位にゃ、あれ?俺少なくね?とか思ったら、惚れたが負けって思い直して踏ん張り処。五分五分に持ち直す。口付けと言うより噛み付くに近いキスもアイツなりの表現で、わかってる辺り俺も四位は貰ってる。わかってる事をわかってるだろうと言うお互いの確証の無い繋がりは、拮抗してるんだろう。目の前の戸を軽く引いて所定の位置を覗く。
「ただいまー」
「生憎お前の家じゃねぇな」
即座に返って来る言葉に笑んでそのまま戸を閉める。
「なァ、俺達、五分五分?」
端的に発した言葉を鼻で笑うアイツ。
「確証の無いもんに縋んじゃねェよ。数字なんざ疑う位が丁度良い」
返って来た笑みに確証を得た。
「じゃあ、お前に対する気持ちは疑わねーよ。数字じゃねェし」
「好きにしろ」


互いを繋ぐものは、互いにさえ見えてれば良い。




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