とっても美味しい | ナノ
 




サイ津







「シズちゃんはかわいいねえ…ねえ、なんでいざやくんと付き合ってるの?」


「なっ…俺はべつに、」


「えー、シズちゃんったらそれはないんじゃないの?俺の家に来てるんだからさあ…ちょっとくらい甘えてくれたって良いじゃない」


「誰が手前なんかに甘えるか…」







これは、少し、おもしろくない、ぞ。
おれはしずおと一緒にいざやの家にきた。もちろん、おれはサイケにあいたくてきた。
でも、いまサイケはしずおのひざのうえにのって、抱きつきながらはなしている。
サイケは、おれのなのに。
でも、しずおもだいすきだから、別にいやじゃない。ただすこし、もやもやする。



なら、おれもいざやに抱きついてみればいいのか。


自分で考えたかいけつさくをさっそく試そうとおもい、いざやの服をひっぱってみる。




「ん、なあに?どうしたの、津軽」


「い、いざや…ひざにのっても、いいだろうか」


「膝?俺はべつにいいけど…、うん。おいで?」




いざやは、ことばをくぎってしずおとサイケを見た。
きっと、しずおが「ヤキモチ」をやいてしまうのを知っているから。おれには、「ヤキモチ」というコトバのいみはりかいできないけれど。



おれがちいさくうなづいて、いざやのひざに乗ろうとすると、きゅうにからだを引っ張られた。





「いざやくん、どういうつもり?」


「どうもこうも…ただひざに乗りたいって津軽を許可してあげただけだけど?」


「…だめ、つがるは俺の。いざやくんにはシズちゃんがいるでしょ」


「そのシズちゃんを取ってるのは誰かなあ」



いざやのそのことばをきくと、サイケはむっと顔をしかめた。
するとすぐに、おれのからだがふわっとうきあがった。



「さ、サイケ…?」


「ん、つがる。おれとむこうの部屋、いこっか」



そういいながらサイケは、いざやのねるばしょにむかう。
いいのだろうか、マスターであるしずおたちからはなれてかってにねるばしょにはいってしまっても。
そうおもうけれど、いざやは何もいわないし、しずおはこっちを見つめるだけだし、いいということなのだろうか。




おれを「おひめさまだっこ」というものをしていたサイケは、器用にドアをあけて、ベッドにおれをおろした。




「サイケ、いいのか?しずおたち、むこう…」


「いーの。ねえ、つがる?」


「……?どうした、」


「つがるは、なんでいざやくんのお膝に乗ろうとおもったの?」




おれのとなりにすわって、手をにぎりながら首をかしげるサイケにみつめられると、
おれのなかの胸のなかのキカイが、すこしおとをたてる。くるしい。




「サイケが、しずおのひざに、のってたから」


「…つがるは、シズちゃんのおひざに乗りたかったの?」


「ちが、う…ぞ。」


「じゃあ、いざやくんのお膝にのりたかったの?」


「それも、ちがう。」




ふるふると首をふると、サイケはにっこりとわらった。なんでわらうんだろうか。




「じゃあ、つがるはヤキモチをやいちゃったんだね、ぷくーって!」


「ヤキモチ?しずおがよくやいてる、オモチか?」


「そうだよ、つがるもやいちゃったんだね!」




どうやら、おれもしずおと同じように、ヤキモチってものをぷくーっとやいてしまっていたらしい。
おもち、どこにやけたんだろうか。




「そのおもちは、どこでたべれるんだ?」


「そうだね、ヤキモチは……、」








ヤキモチは、サイケとちゅうをすれば、たべれるんだって。










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