「…大っきらい」
俺がこの言葉に傷ついたのは何度めだろうか。
初めて会ったときから所謂犬猿の仲だった俺と臨也は、常に殺しあいの喧嘩をしていた。
俺をいつも怖がらずに話しかけてきて、全力を出しても壊れない奴は臨也が初めてだった。
「シズ、ちゃん……」
高校の時、授業をさぼって屋上で寝ていた俺の名を呼び、そっと唇を合わせてきた臨也の俺を呼ぶ声が忘れられない。
あのときのように、俺の名を優しく呼んでくれればいいのに。
俺はあの日から臨也を変に意識するようになってしまった。もちろん俺のあいつに対するイライラが治まったわけではない。ただ、あのキスに何の意味があったのかが頭から離れなかった。
そんな俺に反して、アイツはそれまで以上に冷たく接してきた。
高校を卒業し、社会人になった俺たちが未だにこんな関係を続けているのは俺が臨也にとっての人間になるのが嫌だったからだ。
化け物じみたこの力を見せることによって、あいつにとっての特別でありたかった。
あいつからの人間への愛、を受け取るなんてことはしたくなかった。
たとえ、どんな形だったとしても特別になりたかった。
ただ、ただ………――――――――
「シズちゃん?」
目の前、至近距離に臨也の顔があった。嫌いという言葉に少し考え込んでいたみたいだ。
今更こいつと喧嘩する気にもなれなくなった俺は臨也に背を向けた。
「なんか萎えた。今日は見逃してやるからさっさと巣に帰れ」
「は……?なにさ、それ」
「煩ぇ、消えろ」
「ちょっと、ねぇシズちゃん。」
俺の腕を掴んだあいつはあの時のような優しい声音で、
『どうしても、伝えたいことがあるんだ』
と言った。
(そういえば、あの日もこんな秋晴れの日だった。)
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こんな文章でいいのだろうか。
大好きなチセさんのお誕生日ということで勝手にお祝い。
チセさんのお話大好きです…、生まれてきてくださったことに感謝。
お誕生日おめでとうございます…!
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