シズちゃんに悪戯をしかけていた高校時代に本人に言われた一言、「手前は世界で一番の臆病者だ」
俺は正直その言葉の意味が分からなくて。俺は自分の手を汚したくなくてただそれだけの理由でシズちゃんに色々な奴をけしかけている、ただそれだけだった。
高校を卒業してからも俺たちの喧嘩するという行為は終わりを見せず。変わったのは、俺が他のやつの手でシズちゃんを陥れるという事をしなくなったこと。
自分でもなんでそうなったのか分からないし、気づきたくなかった。
シズちゃんが上司と居るところに偶然遭遇して、形容できないくらいに胸が苦しくなったことによって半強制的に気付かされた。
俺はシズちゃんが好きなんだって、ことに。
「シズちゃん、好きだよ。」
「なんだ……?手前、とうとう頭ぶっ壊れやがったか?」
「違う、本当なんだ……、好き、俺も最近気付いたんだよ。俺はずっと自分の手でシズちゃんを傷つけるのが嫌だった。でも今度は他のやつにシズちゃんが傷つけられるのも耐えられなくなって……」
「いざ、」
「だからね、シズちゃん…俺は君を愛すから、君は俺を愛してよ。俺は君の力なんかこわくない」
そう言って俺が近づくと少しシズちゃんは少し後ずさりする。当たり前だ、男に告白され、しかもその相手が大嫌いな俺なんだから。
嘘ばかり付いてシズちゃんを陥れて、そんなことを繰り返していた俺に急に告白されただなんて、冗談としか思えないだろう。きっとこれも嘘だと思われているに違いない。
「ごめんね、伝えたかっただけなんだ」
シズちゃんの答えを聞かずに家へと逃げ帰り、ベットに倒れ込む。
「臆病者だ、」その声が鮮明に頭の中で蘇る……その通りだ、俺は世界で一番の臆病者。
もう池袋でシズちゃんに見つかったとしても俺を追いかけてくることもなくなるだろうと考えたところで玄関が壊れる音が聞こえた。
思わず起き上りどうしようかと悩んでいると目の前のドアが勢いよく開かれる。
「……臨也」
「なに、シズちゃん。俺はもうかかわらないようにしようと思ったのにさ。それとも気持ち悪い俺を殺しに来たの?」
大げさに肩をすくめてシズちゃんをちらりと見る。いつの間にか俺はシズちゃんに抱きしめられていて。
「何してんのさ、離れなよ。俺に犯されたいの?」
「んな訳ねぇだろ死ね」
「じゃあ……、」
「お前なんて大嫌いだ」
その言葉をきいて、俺の胸はひどく痛む。そんなこと、分かってるのになぜ抱きしめてくるんだ。なんで俺の部屋まで来て、俺を抱きしめたりなんか―――…
「じゃあなんで俺の家に来たの、なんでこんなことしてるの」
「んなもんしらねぇよ。でも、お前の告白が嫌じゃなかったんだよ」
そう言って腕の力を強めるシズちゃんの胸から心音を感じる。
「シズちゃんなんて、大嫌い」
「言ってることが違うじゃねぇか」
「いつも思い通りにならなくて、でもだからこそ君の事を一番に考えるんだ。」
「俺だって、手前が気にいらなくて、一番に頭に浮かんではイライラする。」
なんだ、俺たちはもうとっくに両想いじゃないか。もう俺はシズちゃんがいれば生きていける、そんな気さえした。
「シズちゃん、一番嫌いで、一番愛してるよ」
「俺は手前なんか大嫌いだ」
嘘つきな俺たちの、一生に一度の告白。どんな形でも、俺たちの恋愛はこれでいい。
小さく笑いあったあと、どちらともなくキスをした。
(僕ら二人なら「a」遠の「i」もきっと成り立つ そう思えるから )
(君は僕にとって、僕は君にとって 求めるべき答えになるのさ )
♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂♀♂
恋してダーリン!様に提出させていただきます。
恋率方程式で書かせていただいたんですが難しかった……!
上手く表現できてますかね…できてないよね。うん。
ということで静臨っぽいけど臨静です。言い張ります←
参加させていただきありがとうございました!
|