「あぁ…雨か。」
厄介なことになった。今日は池袋での仕事だというのに…雨が降ったことによってシズちゃんに見つかったとしても地面が濡れていて上手く逃げることができない。
シズちゃんに会いたい気持ちはあるけど、どうせ会っても殺す、死ね…なんて暴言を浴びせられて疲れるだけだし……なんて考えながら歩いていると、シズちゃんがいた。
せっかくだし、いやがらせついでに声でも掛けるか。
「シーズちゃんっ、」
声をかけた瞬間、振り向いたシズちゃんはびしょ濡れで少し怒ったような、困ったような顔をしていた。
「臨也、」
「え、なんでびしょ濡れなのさ…噴水にでも突っ込んだ?」
「トラック、ばしゃってやってきやがったから……」
「あぁ……水たまり通った瞬間にその跳ねた水が君にかかったと…って、怒らないの?」
「…なんかもう寒くてどーでもいい」
すごく、貴重だ。俺とシズちゃんが普通に街中で会話しているなんて。だから、俺の思考は色々とおかしくなったんだと思う。まさか、あんなことを言うなんて。
「寒いなら、シャワー貸そうか?」
うちの部屋にシズちゃんが来て20分程度。シャワーの音が止んだ。
多分そろそろ上がってくるのであろうシズちゃんを想像して顔がにやけそうになるのを必死で抑え、デスクに向かい爪をとぐ。
「わり……さんきゅ」
「あぁ、いいよ…気にしないで」
ガシガシと髪をタオルで拭きながらでてきたシズちゃんの顔はお湯の温かさで赤く染まっていて美味しそうだなーと思わず見とれる。このタオルは洗わずにとっておこう。
「……何見てんだよ」
「いや……俺たちがこうやって普通に話して、なぜだかシズちゃんが俺の家にいるなんて考えられないからさ」
大げさに肩を竦めながら相手の表情をうかがうと、ふにゃりと俺に見せたことのない笑顔で笑った。
「確かに、そうだな……、嫌か?」
「別に、君がいいなら良いけど……って、髪の毛濡れてるじゃない。早く乾かしなよ」
「めんどくせぇ。」
ドカッとソファーに座ったシズちゃんに溜息を付きつつ歩み寄り、頭にかぶっているタオルを奪い取る。
「な、なにすんだよ」
「…乾かしてあげるよ。俺の家に来て風邪ひいたなんて理不尽な理由でゴミ箱投げられたら嫌だからね」
言いながらシズチャンの頭をわしゃわしゃと乾かす。本当に予想外だ。俺の予想や予定をはるかに上回って大人しく俺に身を任せているなんて……後ろから俺がナイフを刺すかもしれない、なんて事は危惧していないようだ。
「ねぇシズちゃん、」
「んー……?」
「これってさ、恋人若しくは夫婦みたいだよね」
「なっ…!?手前、何言っ……―――」
顔を赤くして振り向いたシズちゃんの口を塞ぐ。目をつぶっていたけれど表情が見てみたいとおもって目を開くとその表情は驚きに満ちていた。
「ははっ、可愛い」
「手前、正気かよ……」
唇を離して思わず出た言葉にシズちゃんは唇を服で押さえながら怪訝そうに眉を寄せている。
「うん、今日のシズちゃんいつもと違うし、ドキドキする。ねぇ…俺の恋人にならない?」
「かっ………、」
「ん?」
「考えとく……っ!」
そう言って慌てて家を飛び出したシズちゃんが可愛くて可愛くて。
「冗談、って言おうとしたのにな……」
いつものように暴言を吐かれると思っていたのに、考えてくれるらしいシズちゃんがいとおしくて、思わず緩む顔を押さえその場に座り込んだ。
(ねぇシズちゃん、期待してもいいのかな?)
(くそ……期待、しちまうだろ)
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私がトラックに水かけられた事から思いつきましたわたしGJ。
相合傘はまた今度書きたいです。
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