10月 | ナノ






「はいはいはいはーい!みんないるよね?」


明るい声でアンドロイド全員をリビングへと集合させたのはほかならぬサイケだ。今日はもう20日になっているというのに、静雄との約束を取り付けていなければ、お菓子を買うことも作ることもしていない。
そもそも今月は誰と誰が担当の日であっただろうか。……そうだ、サイケと津軽である。大方和風がメインな津軽はお菓子のレパートリーが少ないために自分たちほかのアンドロイドの知恵を借りようと思っているのだろう――――と、サイケと同じ臨也の顔をしているが性格は全くの反対である六臂は想像する。面倒くさい。


自分は比較的オリジナルである臨也に似せて作られているせいか仕事の処理速度も速く、任せられる仕事量もほかのアンドロイドたちの倍以上…サイケの馬鹿みたいな行動には普段からうんざりしているのだ。


「戻ろう」


月島に口を開きかけた瞬間、サイケの声が耳へと響く。



「そういえば、何で毎月20日にシズちゃんにおかしあげてるんだっけ」


とぼけたようにいうサイケに驚愕する。


「お前が言いだしたんだろこのガキ。俺と同じ顔で馬鹿なことばっかりしないでくれる?」

「なんだと、このショタコン。あっごめんねつきちゃんはショタじゃないんだっけ?」



アンドロイドが集まると誰かと誰かが喧嘩を始めるのはいつものことで――1人は大抵の場合サイケであることが多いのだが、とにかく必ずといっていいほど言い愛が始まってしまうのだ。


「大体、お前はいつも月島のおやつ取って…かわいそうだろ。」

「今それ関係ないんじゃないの?六臂君うざいよ」

「あっ…け、喧嘩はダメですよ!」



日々也がわたわたとしながら低レベルな争いの間に立っているのを見守る津軽と月島。
しかしデリック歯と言えば鼻歌を歌いながらテレビを見ていて、全く喧嘩をしている二人に興味を示していない。
恋人である日々也が二人の間に入っているとはいえ、喧嘩の内容自体デリックにはどうでもいいことのようであった。

しばらく下らない言い争いが続き、とうとう限界が来たようで立ち上がった津軽に釣られ、月島も立ち上がる。



「めっ。」



津軽はサイケに、月島は六臂にしがみつき、動きを止める。アンドロイドとはいえ、恋人にはめっぽう弱いのだ。
最初に集まった理由を見失ってしまうのも、いつものことである。




「けんか、めっ!」








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