4月 | ナノ






「第一回、しずちゃん感謝祭とうじつです!」

エプロン姿でなぜか泡だて器を持ったサイケは、キッチンの前に立ち一カ月前に集合したメンバーを呼び、楽しそうに告げる。それにデリックが少しだるそうに手を挙げ、口を開いた。


「サイケせんせー、なんで今月は津軽先輩とサイケ担当なのに俺らまでよばれてんですかー?」

デリックの質問はもっともである。なにも前回の集合は一カ月前ではないのだ。あれから何度かこうして集合し、計画性がないにも関わらず立案だけはするサイケに変わって、「月島が楽しみにしているみたいだから」という理由で一度やり始めるととことん真面目に仕事をこなす六臂が計画を立て、一カ月ごとにするか、それとも偶数月と誕生月だけ交代制でするなどのさまざまな決まりごとなども考えたのだ。

それを見ていた臨也は、このメンバーはまるで教室のようなうるささだ、と思うが自分と静雄が学生だった頃はまたこのうるささとは違ったものがあったと思い出に耽ったりもしていた。

そのうちなぜかサイケの指導係となったデリックが六臂と一緒に仕切り始め、それを見た彼らのパートナーである日々也と月島が嫉妬をしてしまっていたのはまた別の話である。
もっとも、月島はその感情自体が嫉妬ということすら知らないのであるが。


「だって、初めての。第一回めだよ?しずちゃんは今日7時に来るんだけど、俺料理できないからさ、なに作ればいいかなって思って」

「そんなもん、自分で考えろよバカ兄貴。」

「うっさい、バカじゃないもん!デリちゃんのバカ!」

「ふざけんなこのネコかぶり!」


サイケの返答にアンドロイドの中では一番性格が静雄に近く作られているデリックが怒ると、それはそれは低レベルな……――それこそ、小学生の喧嘩のような兄弟喧嘩が始まり、津軽と日々也が慌てて止めにかかり、呆れた六臂は月島を連れて部屋へと帰り、臨也は我関せず、と仕事を続けた。



兄弟喧嘩が終わるころには5時をとっくに過ぎており、第一回目にして一年に一度のしずおのひ、は市販のプリンを三つ買い、プッチンしたあとに生クリームで4、2、0 と書いて静雄に食べさせるだけで終わった。



「なあ臨也、これ本当にもらってもいいのか?」

「…どーぞ、シズちゃん。」


いただきます、と言ってスプーンを手に持った静雄は嬉しそうな表情でひと口目を口にした。





「ねえねえしずちゃん、俺もたべたいな!」








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