「来月は、しずちゃんのひ、です!」
3月20日、臨也の家のリビングに津軽、デリック、月島、日々也、六臂…そして家主であり自分たちのマスターである臨也を集め大きな声で手を広げ言葉を発したのはサイケであった。
もちろん、静雄の誕生日はとうに過ぎているのに何を言っているんのだというような表情をみなそろって浮かべ、臨也に至ってはまた面倒事が起きると予測したのかため息をこぼしていた。
「どういうこと、だ?」
サイケの恋人である津軽が手を挙げてサイケに尋ねると、彼は待っていましたと言わんばかりの笑顔で皆にカレンダーを見せた。
そして、一枚カレンダーをめくり、4月の面を出してちょうど一カ月後の今日、20日を指差した。
「4月20日、つまりしずおのひ。つまりしずちゃんのひです!」
きらきらと輝くような笑顔でそう告げたサイケに対し一瞬あっけにとられたものの、ワンテンポ遅れて津軽と日々也、そして月島が拍手した。
「で、なんだってんだ?静雄の日はわかったけどよ。」
「よくきいてくれたねデリちゃん!来月から、しずちゃん感謝祭をします!」
小さな拍手が止むのを待ってデリックが先ほどの津軽にならい挙手しながら質問したところ、サイケはさらに笑みを深くして告げる。
サイケが堂々と言い終わるのと同時に二つのため息がこぼれ、臨也が口を開く。
「サイケ、たしかに良い案だとは思うけど…一体何するのさ。どうせくだらないことなんだろう?君の子供じみた考えなんかでシズちゃんが喜ぶことないと思うけど。」
「俺もマスターに同意するね。というか、くだらない。そんなことをする暇があるなら静雄さんに迷惑がかからないように大人しくしていることができないの?」
俺はパスね、と告げて立ち去ろうとする六臂のコートを座ったままつかんだのは月島だった。
月島はあの、だとかえっと…などともごもごと言いづらそうに口を動かし、六臂をまっすぐに見つめたと思えばはっきりとした声で「おれは、いいとおもい…ます」と言う。
月島のその表情と声にう、と小さく声を漏らして固まる六臂に臨也は苦笑を浮かべる。
結局、じぶんと同じで六臂も恋人には弱く、そして甘いのだ。
六臂が再び観念したようにため息をつきつつ月島の横に腰をおろしたのを見て、サイケはまたにこりとほほ笑んだ。
「しずちゃんのために、まいつき20日はおかしをつくります!」