佐藤さんと日野君と悩み


「とりあえず鼻水をかみなさい、鼻水を」

2分位俺の髪を撫で続けた佐藤さんが何かを諦めたような口調で、俺の胸に箱ティッシュを丸ごとぐいぐいと押し付けてくる。いたた、痛い痛い。痛いって。こういうとこがオッサンだと思う。これが佐藤さんなりの優しさなんだろうけど優しさに力加減無いっつーか。容赦が無いっつーか。とりあえず痛い痛い、角が当たってるっつーの。結局その強引な優しさに負けてティッシュを抱えるようにして受け取る。それでもって顔をあげて、鼻水を啜った。ずびずび。佐藤さんが笑う。とてつもなく人をバカにした感じの笑い方で笑う。

「ブッサイクな泣き顔でちゅねー」
「ガキ扱いしないで下さいちくしょー」
「だってガキだろ」「佐藤さんはオッサンじゃんか」
「嫌いになったか?」「ならねぇよちくしょー」

わかってるくせに、と呟くと同時に勢い良く鼻をかんだ
今更ながら目の周りがひりひり痛いことに気付いた
今更ながら佐藤さんがいつもより
少しだけ嬉しそうに笑ってることにも気付いた
(くそう、その顔カッコイイぞオッサンめ)

何でちょっとだけ嬉しそうなんスか」
「若い子にモテるのが快感なお年頃なのよ」
「オッサン」「うっせぇクソガキ」

吐き捨てられるのとほぼ同じタイミングでデコピンを打ち込まれた。これぞ泣きっ面に蜂。また泣くぞ、ねぇ泣いちゃいますよ。佐藤さんという人間(40)は泣き落としが効くようなそんな生温い種類の中年では無いけど、この世には便利なことに当たって砕けろという言葉が存在する。であるからして意図的に目頭に涙を貯蓄している途中、零れる程溜める前に佐藤さんの先制攻撃を受けた。腕を掴まれて、振り落とす要領でソファの上に強制的に座らされる。呆然としている俺の手にやはり強制的にテレビのリモコンを持たせて佐藤さんは手をひらひら振りながら台所に向かった。

「今日の味噌汁は特別に俺が作るから座ってTVでも観てなさい」
「佐藤さん、作れんの?」「なめてんのかお前は」


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