蘭拓(イナゴ)



:)泣かれたってさ

涙が滲んだ目に罪悪感を感じたときは塞いでしまえば簡単だった。押し付けた手のひらが湿りはしたが行為中にずきずきと胸が痛むことは無くなった。それでもまだ肩を震わせて俺の名前を呼ぶ声が鼓膜を掠るので、指にウェーブしている髪を絡めながら俺の下敷きになっている神童の耳に唇を近付ける「もう戻れないんだよ」「霧野」どうしてと続いた言葉を無視する。何でかって、そんなの俺が聞きたい位だったからさ。手のひらが湿る。指先からゆっくり溶けて消えてしまえたら良かった。胸がまた痛み出す。もう戻れないんだよ、分かれよ。




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