詰め合わせ



(∵)短いの詰め合わせ

雨音/クダノボ
乱暴に屋根を叩く雨の音にテンションが上がるタイプなので、怒られるの承知で窓を開けてはしゃぐのが大雨の日のささやかな楽しみだったというのにノボリが「クダリが窓を開けて大音量の雨音を楽しんでいる間に好きだと言ってみたんですが、聞こえなかったみたいですね。残念です」と呟いたりするもんだから、この瞬間から僕の中の雨音というのはただ屋根を騒がしく叩くだけの音に成り下がってしまった。窓の鍵を閉める、してやったりな顔のノボリを抱き締める、こういう時間が一番好きさ。


バスルーム/ミナマツ
「ここに着替えとタオル置くよ」「あぁすまないマツバ、シャンプーがもうないんだ」バスルームの中からあまり申し訳無くなさそうな声で頼まれても嫌な顔一つせず、素直にシャンプーの詰め替えを渡す僕からシャンプーを受け取りながら「ありがとう。あと、今日は鍋が食べたい」と注文をつけてくるミナキ君は僕をお母さんか何かと勘違いしている。「失礼な、妻だ」と訂正するミナキ君は色んな面で僕を勘違いしている。ぐるぐる考えながら、昆布を浮かべた出汁をぐるぐる混ぜる。今日は鍋だ。

首筋/アカデン
「アカギさんって首筋好きですね」「そうでもない」否定する割には後ろから俺を捕まえたまま首筋に顔をくっつけているアカギさんはアカギさんじゃないみたいで、でもアカギさんで、まぁアカギさんだった。ごつごつ骨張った手で固定されて、呼吸があたる度に首筋が熱を持つ。アカギさんは上手く誤魔化してるつもりらしいけど、甘えるとき顔を見せたくないってこと俺は知っている。この人は意外に可愛いって俺は知っている。甘やかしてあげる自分っていう立場がお気に入りなので、それについて特に触れず俺が沈黙してこの時間を過ごす理由をアカギさんは知っている。きっと知っている。背中があったかい、眠い。


煙草/ラムアポ
半端な長さの煙草を差し出されて困惑する私に向けられた笑みがあまりに悪意に満ちていたせいで意識していなくても眉間に皺が寄ってしまったこれを、誰にも責める権利は無いと思うんです。「関節キスしたそうだったから」それとも直接が良かったかしらとふざけた口調にもっと眉間に皺が寄ってしまったこれを、だけどキスされては拒めないこれを、誰にも責める権利は無いと思うんです。唇を拭う私を、ラムダは優しい顔で笑う。ずるい。


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