ミナマツ



:)不機嫌なつもり

あれもこれもと差し出す姿はまるで21世紀からやって来た青いロボットみたいだと思った。現に僕の目の前の畳にはエンジュでは見かけない、まるで未来の世界から持ってきたような珍しいものが沢山並んでいるのだ。1つ2つだけのうちはそっぽを向いて見ないふりを決め込んでいたけれど、並ぶお土産の数が遂に10を越えた頃から少しずつ視線は真正面へと戻っていった。積み重なったお土産の少し先にはかしこまっているのか正座で、必死に話続けるミナキ君が居る。これはイッシュのライモンシティにしか売っていなくて、とか。これはシンオウ地方の神話の絵本で、とか。説明付きで繰り出されるお土産の数々がとうとう重なっていることも出来ないで畳の上に崩れた瞬間、折角不機嫌を装っていたというのに笑ってしまった。真正面で表情がやわらぐのを今か今かと待ちわびていたミナキ君が素早く食らいついて来る。ホッとしちゃって、分かりやすいなぁ、もう。

「マツバ、やっと笑ったな」
「だってミナキ君必死過ぎて」
「そりゃあもう必死にだってなるさ」

「次からは帰ってくるって言ったら帰ってくること、それから帰って来れなくなったらちゃんと連絡すること。こっちにだって準備があるんですからね。忙しいのは分かるけど、僕のことも分かって欲しいなぁ。ミナキ君、分かったかい?」

「あぁ分かった、分かったから、マツバ」「駄目だよミナキ君」

正座を解いて山になったお土産を掻き分けて詰め寄って来るミナキ君の額を押して体を遠ざける。なるべく不機嫌に見えるように、それでもどうしても笑ってしまう口元のまま言葉を伝えた。ライモンシティとかいう場所のお土産が、ピカピカと派手な光を点滅させている。都会のセンスは理解出来ないな。

「まだ反省が足りないから、あと1時間ここで正座して」
「それはあんまりだぜ、マツバ!」
「冗談だよ、君は相変わらず面白いね」

情けなく眉尻を下げるミナキ君の一旦押しのけた額にキスする。すぐさま凄い勢いで押し倒されてしまったけど、もう不機嫌なフリなんてする余裕はなかった。畳の上に散らばる懺悔の為のお土産の説得力はこれで皆無だ。用途不明な、ただ色とりどりに点滅する光が視界の端でチカチカ目に優しくなく光っている。どれも不機嫌になるには持って来いだけど、やっぱりなれなかった。チュ、チュ、キスして離れないミナキ君に酸素がどんどん奪われていく。
「もう機嫌直ったのか」
「君の態度次第ではすぐ悪くなるよ」
「それは怖いな、気を付けよう」
「ふふ、丁重に取り扱ってよね」

少なくともそうやって僕の機嫌をうかがって何処か臆病で居るうちは、機嫌が損ねることはないんだけど。教えてあげない意地の悪さは、1時間の正座の代わりだと思って許してね。電池が切れない限りちらつき続けるであろう光に当てられながら、ちっとも不機嫌が滲まない顔をしてミナキ君を見つめていた。畳の匂いとミナキ君の香水の匂いがする。大好きだよ。



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