オデン



:)話を聞けよ

ナギサタワーのてっぺんで、今日も今日とてただ温かな日差しを浴びながら設置された柔らかいクッションが敷かれたベンチの上でうたた寝している成人済み男子2人とはこれいかに。俺はこう見えてそれなりに常識なものだからこの状況に若干の危機感を感じているのだが、もう片方のデンジにはそういった感情は微塵も無いらしかった。知っていたし期待もしていなかったけど、本当に一切働かないでダラダラ垂れ流すように生きていることに何も感じていないデンジにはもう笑うことも出来ない。かろうじて一緒に居ることしか出来ない。それはさておきガラス張りのナギサタワーは直接日の光が注ぎ込む。つまりどういう意味かといえば、すこぶる眠たいのだ。うとうとと舟を漕いでは浮上する意識をどうにか保とうと目を雑に擦ってデンジに話しかける。眠たそうではあるがデンジは覚醒していた。しっかりとしているかは別として、眠そうにだるそうにデンジは青の両目を開けてナギサタワーの外を眺めていた。

「きれいな景色だなデンジ」
「見慣れたし退屈な景色じゃねぇか」
「海が光ってるぜデンジ君」
「まぶしいし目障りだっつーの」
「お前ほんとインドア気質な」
「じゃあお前はドアの外にアウトして来いよ」

インドア気質兼ああ言えばこう言う気質のデンジは相変わらずの減らず口を叩くけど、決して俺を強制的にタワーのドアから蹴りだすということはしなかった。初めはただ単に面倒だからかと考えていたが、よく考えればレントラーやライチュウを使えばいとも容易いことなのに。ということは、どういうことか。ひょっとしてデンジは俺に側に居て欲しいのかなんてそんなことを思っちゃったり、してみちゃったり。そうして結局何の変化もなくダラダラとデンジの隣を陣取り続ける。光を反射する海はガラスをちりばめたみたいにキラキラと光る。きれいなのになぁ、しみじみ思う。それでもデンジはこれをきれいに思わないのなら仕方ないからまた新しい話題を探し求めて口を開いた。俺のこの努力は一体、いつ報われるのだろうか。

「デンジ見ろよビーチに居る水着ギャル可愛いぞ」
「あぁ、うん、そーだな」
「黒髪のビキニって茶髪のビキニよりそそるよな」
「あぁ、うん、そーだな」
「まぁお前のが可愛いけど」
「あぁ、うん、そーだな」
「人の話聞けよ」「聞いてるよ」
「適当じゃねぇか」

「それが俺だよ、そんでそんな適当で面倒臭がりな俺を適当に扱わず面倒臭がらず世話焼いてくれんのがお前だよ」

「え、何それ、デレ?」
「たこ焼き食いてぇなぁ……」

人の話を聞けよだなんて、もはやツッコミを入れる気も失せた。だってやっぱりどうしても、俺にはこの海がきれいに見えて仕方ないんだ。デンジが俺の肩に凭れかかる。可愛い奴め。





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テーマ「人外ファンタジー」
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