せかこい。01






「…ほな、作戦立てんとなぁ…」



どこからかドピンクの派手なノートと、ゴテゴテしたデコレーションがされている(多分ユウジ先輩が作ったヤツや)ペンを取りだした小春先輩が、試合中に見せるような眼差しを見せる。隣を見ると謙也クンもユウジ先輩も、真剣な表情をしてくれていて。俺なんかの為に一生懸命になってくれていることが、本当に嬉しい…口には絶対に、出せないんだけど。



「なんや?みんな揃って、何しとるんや?」

「俺らも仲間に入れて欲しかぁ…ちっとは力に、なれっとよ」

「皆で力を合わせれば、何でも出来るやろ」



開かれたノートを中心に、あーでもないこーでもないと言い合っていると。さっきぶちょーが出て行った扉が開き、遠山たちが入って来た。
千歳先輩と師範は一目で、俺たちが何をしているかを察すると。それぞれが先ほどユウジ先輩がしてくれたみたいに、俺の頭を優しく撫でてくれて。そして力強く、俺たちも味方だと、笑ってくれた。あぁヤバい、さっきとは違った意味で、泣けそうだ。

一人、状況を飲み込めていない遠山には、小春先輩が丁寧に経緯を話している…あんまり、幼馴染には自分の恋愛事情を知られたくないって思ったけど。だけど遠山だって俺にとっては、大事な仲間だし。この中では何だかんだ言って一番付き合いが長い。そんな彼だけを除け者にするのは、よくないだろう。


そう俺が思ったことが、良かったのか。それとも今までの努力を、カミサマってヤツが認めてくれたのか。



「ふーん…ワイにはよぉわからんけど。気付かへんのやったら、気付かせればえぇんやろ?やったら白石んこと捕まえてまって、んでもってひかるんことしか見えんように、してまえばえぇんちゃうん?」



何でもないことのように紡がれた、遠山の言葉を聞いた途端。
電流のようなショックと共に、ある歌の一節が身体中を駆け抜けた。



「…ユウジ先輩、小道具に手錠とかロープとか、ありましたよね?」

「あー…確かこの前のコントで使うたヤツがどっかに…ってオイ、まさか…?」



俺の言葉に、ユウジ先輩の表情が強張る。表情だけじゃない、きっと身体だって強張っているだろう。
俺が何をしようとしているのか、賢い先輩のことだから。気付いたはずだ。



気付かへんのやったら、気付かせればえぇ。
その為やったら、手段なん選らんどる場合や、ないんや。



「ぶちょーが俺んこと、好きになってくれへんのやったら…好きになってもらうようにするしか、あらへんでしょ?」



ニヤリと、そんな音がするように笑うと。



「きゃー!財前ちゃん、よぉ言ったわ!!」

「光ぅ!俺はお前の味方やで!!」

「光くんはむぞらしかねーきっと白石も、光くんこつ、好きになっと」

「うむ…だがそれやったら白石はんも、気付いてくれるかもしれんなぁ…」



先輩たち(除・ユウジ先輩)が総立ちになって、俺のことを激励してくれた。
みんな本当に俺の事を、応援してくれていて。出来ることがあれば何でも言えとまで、言ってくれて。



「よぉわからんけど、頑張りや!ひかる!ワイも応援しとんで!」



ちょっと引いた場所にいた遠山も、笑顔で言ってくれた。
そんな、昔からちっとも変わらない幼馴染に。



「…おおきにな。自分のおかげで、踏ん切りついたわ」



絶対ぶちょーには言えないような素直な気持ちを、伝えることができた。
そうするとまた、遠山はニカッと笑って。先輩らも皆、その意気やでって、笑ってくれて。


ぶちょーにもちゃんと俺の気持ち、伝えることが出来たら。そうしたら笑ってくれるのかな。



「ちゅーわけで。ユウジ先輩、よろしゅうに」


その為にも、必要なアイテムはきちんと確保しておかねば。

一人隅っこでブツブツ言い腐っているユウジ先輩に、念押しをする。俺の言葉だけでは頷かなかった先輩に、小春先輩も一緒になって、頼んでくれた。


「…あーわーったわーった!明日までに探しといてやるから、待っとれ」

「おおきにっすわー」


よかったわね、財前ちゃん!と、小春先輩が抱きついてくる。謙也クンもよかったなー!て、背中をバシバシと叩いて来て。千歳先輩もそれに乗じて、俺の頭をわしゃわしゃと痛いくらいに撫でる。
いつもだったらキモいっすわーウザいっすわーって返すところだが、今は甘んじて受けておく。ユウジ先輩はいつもの台詞を叫んでいるが、そんなこと気にしている暇もない。


しっかり小春先輩にホールドされながら、背中と頭に痛みを感じながらも。
俺は明日から、どうやってぶちょーにアタックしていくか。それしか考えていなかった。




待っててくださいね、ぶちょー!
絶対にぶちょーのこと、振り向かせたりますから!










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