※高校生パロ 友情出演、日吉と切原






「財前せんぱーい!!一緒帰りましょー!!」





賽は投げられた。





「おい財前。カレシがお迎えに来てるぞー」


にやにやしながらそう告げる切原の癖毛頭を、思い切り殴ってやると。痛ぇと声があがったが、無視。それから、絶えず俺の名前を大声で連呼する後輩のことも、無視。


「…いい加減、行ってやったらどうだ。どうせお前、暇なんだろうが…」
「うっさいわ」


ため息と一緒にそう言い捨てた日吉には、これ以上何も言うなという意味も込めて一言返す。それにまたため息を吐いたそいつに、あぁ、幸せが逃げてまう、逃がしてまうくらいやったらその幸せ、俺にくれやーと、心の中で思った。


「ざーいぜーんせーんぱーい!!いっしょかえりましょーー!!!」


大声を出しながらも、教室に入ってこないのは他の目があるからか。それともこの前、上級生の教室には勝手に入るなと、注意されていたからか。恐らくは後者であろう、その声の主は。


「ざーいぜーんせーんぱーい!!きこえてるんでしょーー!!?」

「ほれ、いい加減返事してやれよ。てめぇのカレシだろうが」

「はぁ?一体、何がどうなったら、俺があんなガキと付き合うことになんねん?ちゅーか、名前すら知らんわ」



カレシでも何でもない。本気で名前すら知らない。
知っていることと言えば、その燃えるような赤毛と、それから後輩であろうことだけ。
いつも唐突に現れ、俺に質問の嵐を浴びせるだけ浴びせ、それで去ってしまうのだから。


自分のことは何も語らず。


そんな奴も、こうやって毎日のように放課後になると俺たちの教室までやってくるものだから。他のクラスメート(含・切原)は完全に俺の縁者だと思っているようだが。それは大きな間違いだ。俺と奴との接点は皆無であり、それはこれからも、変わらないのである。



「財前先輩ってば!ちょお!早ぅ帰りましょーよ!!先輩が好きそうな善哉の店、ワイ見つけたんです!!ワイ、奢りますからぁー!!」


善哉という言葉に、思わず耳が動く。それを見た日吉が、本日三回目のため息を吐くと。



「…もう、行ってやれ。いい加減、邪魔だあの赤毛」



断じて俺は、あの赤毛とお近づきになりたい訳ではない。ただ、善哉をタダで食べられるから、行くだけだ。


そう自分に言い聞かせながら歩くと。相変わらず癖毛でもこもこしている頭をさすりながら切原が、今日もお熱いこって!なんて冗談を言うものだから。

今度は、学生カバンの角で思い切り、その頭を殴り飛ばしてやった。








「もー!遅いじゃないですか、先輩。ほら、早ぅ行きましょ!」
「…何でお前は毎日、俺につきまとうねん」


後ろから聞こえてくる悶絶するようなうめき声は無視して。ドアの所で忠犬よろしく待っていた赤毛に一瞥をくれると。まるで尻尾でも振るような勢いで、俺よりも半歩、先を歩き始める。そんな奴に、今度は俺がため息を吐きながら(アカン、幸せ一個逃げてもうた)そう言うと。



「えーそんなん、毎日言うとるやないですかー」



にこにこと、効果音があるとしたらそう言ったところか。そんな笑みを浮かべた赤毛はくるりと踵を返し、俺の顔をしっかりと見つめると。




「ワイ、先輩のことが好きやからです。愛しちゃってるからです。やからこれから、先輩がワイのこと好きになってくれるまで、ずーっと傍におりますからね」






絶対惚れさせたりますから。覚悟しとってくださいね。






そう言う赤毛の顔は、にこにこなんて可愛らしい笑顔ではなく。
獲物を狙う、猛禽の眼が、しっかりと貼り付いていた。





End.






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