※似非ドリー無
ひかるくんと、あなた。







白いカーテンが、風を受けてはためく。
その隙間から見える色は、青一色。


「…やっと起きたんか」


その青はすぐに、一人の青年によって、隠されてしまったけれど。





愛の季節





「…私、寝てた?」

「おー、そりゃもう、ぐーぐーと」

「え、嘘!だって、私、私…!」



跳ね起きると申し訳程度に被されていたタオルケットが宙に舞う。乱れた着衣が目に入ったが、そんなこと気にしている間もないくらいに私はうろたえていた。


だって、だって私、私は…




「誰よりも早ぅおめでとうて、言うてくれるんやなかったんか?」

「ああぁ!!ご、ごめんなさいぃぃ!!」



そう、目の前にいる恋人の誕生日を祝うために、一番最初に祝うために、前日から彼の部屋に泊りこんでいたのだ。


それなのに。



ここに来る途中立ち寄ったコンビニでアルコールを購入してしまったことが、間違いだったのか。
それとも彼の部屋に二人きりというシチュエーションが久しぶりだったことが、いけなかったのか。


兎に角私は、私たちはその場の熱に浮かされて一時の快楽をむさぼった。
本来の目的なんて、すっかり忘れて。


多分、意識を手放したのは日付が変わる前だったと思う。覚えている限り最後に見た時計は、まだ23時前を示していたから。

ベッドの上、起きた時と同じ姿のままで失意のあまり項垂れる。

あぁ、何やってるんだろう私。せっかく色々と計画していたのに。時計を見ればもう10時。何だかんだ言って交友関係の広い彼のことだ、もうとっくに誰かから、おめでとうって言われているに決まっている。きっとそうだ。


いくら夏でも、そないな格好しとると風邪ひくでと、肩に掛けられたのは彼のシャツだった。
ほのかに漂う彼ご愛用の洗剤の匂いが、段々と落ち込んでいた心を浮上させるかのように、私を包み込む。




「…で、言うてくれんの?」

「な、何を?」



私が落ち着くのを待っていたのであろう、彼の口から出た言葉。


え、私さっき謝ったんですけど。
それにこうなったことの原因の一端は、あなたにもあるでしょうよ。


そう思いながらも何を言わされるのかと身構えて彼の顔を見つめると。目を明後日の方角に動かし、ちょっと照れたようなそぶりをしてからゆっくりと、口を開いて。



「……俺まだ、誰からのメールも見とらんし、電話も出んようにしとってんけど」



そう言われてようやく、自分にもまだチャンスが残っていたことを察した私は。



「お誕生日おめでとう、光くん」



そのまま彼の胸元に、ダイブした。



耳元に光るピアスは、去年の誕生日に私があげたもので。今までずっとつけられることなく、彼の部屋のどこかにひっそりとしまわれていたものであって。
そんなピアスを、今日つけてくれた。昨日まではつけていなかったはずなのに、今日つけてくれた。


それがなんだかとても、嬉しくて。身体を押しつけるように、彼の胸に埋もれるのだった。





***





「…という夢を見てぇ思わず朝から身悶えちゃった☆」

「で、それで遅刻したと?バカも休み休み言えよ!ちゅーかそんな夢みるなよ…」

「うっさいわ!あぁもう、光くん最高っ!もう、このまま飼いたい!!現実世界でもずっと、光くんと一緒にいたいわぁ〜」

「…もういいよ、いいからさぁ、二次元に亡命しちまえ!んで二度と帰ってくるな!」

「それが出来たら苦労せんわ!!…あーホント、マジでどこ行けば二次元になれるんだろうか…」

「…本気でそれ探すの、協力してあげるね」






End.







光誕


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