※財前くんが女の子ですが、別に女の子にする必要なかったんじゃないかなって思う内容です。






僕の彼女は、
色々とエキセントリックです。





Show Time!





「ぎゃー!ひかる、何しとんのやー!!」

「何て…見てわからんの?」



可愛らしく小首を傾げているのは、ワイ・遠山金太郎の幼馴染兼彼女である、1年先輩な財前光。御歳14歳。ちなみに早産まれであるワイはまだ12歳だから、悔しいことに彼女の誕生日である今日、7月20日を以てめでたく、また2歳差になってしまったのだが。


まぁそれは、置いておいて。



「わかるわ!わかるけど、何でそないなことしとるんやぁ!!!」



先輩らの協力を得ながら必死に選んだ誕生日プレゼントを抱えて向かった光の部屋。


その真ん中に座っていたのは、身にまとった真っ白なワンピースにぼたぼたと、血で出来た真っ赤なしみを作っているその部屋の主であって。



「何でて…んー年食った記念?」

「記念ちゃうわぁ!あぁもう!ピアス穴開ける時はちゃんと病院でやってもらえて、言うたやん!安ピン禁止やぁ!!」



その血を出している場所…穴だらけになってしまった小さな耳たぶを、近くにあったガーゼに消毒液をめいっぱい含ませてから覆えば、彼女は少し眉を顰めた。
ちゅーかその安ピン、ちゃんと消毒したのか?そう尋ねたくなるのは、光の手に握られた安ピンが小学校の頃、名札をつけていたもであるからに他ならない。



「あーもう…服かてしみになってまうやん…しかも白やし。おばちゃんに怒られるで?」

「う…それは嫌やなぁ…今洗えば、落ちるかな?」

「てぇ!脱ぐなやぁぁ!!」



じっと、真っ白な布地を汚す赤い点々を見ていた光は、何を思ったのかぺろんと、ワンピースのすそを掴むとそれを一気に捲る。
言っておくが、下にはちゃんとキャミソール着てたからな!んで、捲ったワンピースもワイがすぐに直したからな!まだワイら、清いお付き合いやからな!そこ、誤解せんといてな!!


……はぁ、何や実際にも文上でも、やたらとクエスチョンマーク乱用したから、疲れてしもたわ。


むすっとした表情の光に、一緒に怒られたるからと告げれば。その表情は一気に柔らかいものになる。
あーもう、可愛ぇなぁ。




それから一緒におばちゃんに謝りに行って、2人並んで怒られてごめんなさいって言って。
んでもって光が着替えてくるのを、リビングで待つ。その間ワイは、光の甥っ子と遊んでいるんだが。


将来的に光と結婚するとして、一番の難関は光を溺愛している兄ちゃんや。
そんな兄ちゃんと戦う時、味方は1人でも多い方がいい。
敵が光同様に溺愛しているこの子が味方になってくれたら、心強いことこの上ない…なんてことを考えているなんて、この純真無垢な子どもは知らないんだろうなぁ…




「お待たせ」



そんな邪な想いをもちながら、ちょっと本気になりながらも甥っ子とマリカーをやっていると。たんたんと足音を響かせながら、光が降りて来た。今度は黒のワンピースや。
いつだか、ワンピースばかりを着ているので、そんなにワンピースが好きなのかと聞いたことがある。その時光は真顔で「その方が着替えるん、楽やろ」と言ってのけた。そんな彼女のクローゼットは、彼女自身の趣味というよりは母親と義姉のチョイスであろう、ワンピースで埋め尽くされていることを、ワイは知っている。

少し長めのスカートの裾をはためかせながら駆け寄って来る姿を見ると、自然と顔が緩む。そんなワイをみて甥っ子が「かおゆるみすぎやで」と小さい声で言うてきたもんだから、思わず小突いてしまった。


うん、ワイ悪くない。


目にちょこっと涙を浮かべてこっちを睨んでくる子どもには気付かないフリをして。ワイは光の手を取ると再び、彼女の部屋へと向かった。そう言えばプレゼント、部屋に置きっぱなしだったし。




「はい、ひかる。お誕生日おめでとう」



さっきは光が1人で座っていた部屋の真ん中。今度は2人向かい合って座る。綺麗にラッピングされた包みを差し出せば光は嬉しそうに笑って、それからありがとうを、くれた。



先輩や友達によく言われる。
光のどこがいいんだって。光みたいな変わっている子のどこがいいんだって。


ワイに言わせてみればそれは、正直なだけだ。光は何事に対しても、正直なだけだ。


光はいつでも、正直に、そして真っ直ぐにワイにぶつかって来てくれる。

それがどれだけ貴重な存在であるのかを、ワイはもう知っている。


そりゃ、今日みたいにいきなり安ピン耳にぶっ刺したり、人前で服脱ごうとしたりもするけど。それも全部、彼女の中にある“道理”に適ったことなんだ。
人に言われたからって絶対に曲がることのない、彼女の道理に。


それがどんなに凄いことかも、ワイは知っている。




「どや?似合うかな?」

「ん。よぉ似合うよ。ひかる、可愛ぇで」



柔らかい笑顔を浮かべて、プレゼントしたピアスをさっそく着けて見せて来る光に、ワイの表情も自然と柔らかいものになる。
絶対にみんな、光のこの顔を見たら彼女のどこがいいんだなんて、聞かなくなるに決まっている。だけど、この笑顔はワイだけのものだ。


きらきらと、ひかりを反射させて輝くピアスに負けない位、ひかるの笑顔も輝いていた。





「てぇ!その穴、さっき開けたばかりのとこやん!ぎゃーまた血ぃ出とるし!早ぉピアス外して消毒すんで!」

「えー…せっかく金太郎がくれたんに…外さな、ダメ?」

「か、可愛く言うてもダメなモンはダメぇ!!ほれ、さっさと外しや!!」



再び流れ出した血によって、ピアスの輝きは失われていくけれども。
ひかるの笑顔は、ずっと輝いている…うん。





End.






光誕


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